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2017年11月25日

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藤波匠 (ふじなみ・たくみ)

日本総合研究所調査部上席主任研究員

1992年、東京農工大学大学院修了。東芝、さくら総合研究所などを経て、2015年より現職。主に地方再生研究に従事。著書に『人口減が地方を強くする(日経プレミアシリーズ)』、新著『「北の国から」で読む日本社会(日経プレミアシリーズ)』など。

15万戸分の農地が転用
進む地方都市の〝拡大〟

 さらに、コンパクトシティなどの都市形成が進まないどころか、地方都市では居住地域の拡散が起きている。

(注)1つのドットは1平方キロメートル (出所)総務省「国勢調査」メッシュ統計2015年版を基に筆者作成 写真を拡大

 国勢調査のメッシュ統計をもとに、直近5年間の山梨県における人口の変化を地図上に表してみよう。(図参照)県庁所在地であり人口密度も最も高い甲府の中心市街地では、人口減少が顕著で、その周辺を取り巻くように人口増加地域が分布している。スプロール(都市の無秩序な拡大)の典型である。2000年代前半に比べればそのペースは緩やかになったとはいえ、依然として市街地の膨張は止まっていない。同じ甲府市内でも、中心市街地を構成する16町では5年間で人口が7%程度減少したが、郊外の17町では14%増えている。

 もともと中心市街地で営まれていた商店も、顧客の減少により店をたたむか、人口や商業の集積が進む郊外のロードサイドに進出したものがある。経済センサスによれば、14年までの5年間で、甲府市の郊外では卸・小売業の事業者数がほとんど変化していないにもかかわらず、中心市街地では4%程度減少した。山梨をはじめ全国的に商店の数が減少するなか、その立地が中心市街地から郊外へとシフトしていることが分かる。こうした人口や商店の郊外への流れは、山梨に限ったことではなく、全国的に見られる傾向である。

 地方行政レベルでも、無秩序な開発の抑制が求められ、都市計画にのっとったまちづくりが進められてきたが、緩やかに減少してきた農地転用面積は、近年再び増加傾向にある。この背景には農業の衰退や担い手の高齢化、耕作放棄地の増加などとともに、地価が跳ね上がることを意図した農地所有者の宅地・商業用地への転用期待がある。現在1年間に転用される農地面積は、農地全体からみれば1%に満たないが、14年の住宅地向け農地転用面積はおよそ4000ヘクタールに及び、単純計算で平均的な戸建て住宅15万戸分に相当するほど広大な土地が、主に人口減少が進む地方都市周辺で住宅地として供給されたことになる。

 さらにこの夏、農林水産省は農村での雇用創出の観点から、従来工業など5業種の企業に限っていた農地転用について、対象業種の限定を廃止、大幅に規制緩和した。例えば農業の六次産業化をするための施設を設置しやすくし、今後の農村振興を図るという。

 しかし、過去の経緯をみれば、そうした大義のある転用であっても、蟻の一穴のごとくその周辺の開発を招来し、さらに対象地域の外側の転用期待を高めるため、コンパクトシティとは逆に、さらなるスプロール化を推し進めてしまうリスクをはらんでいる。

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