今月の旅指南

2010年11月5日

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辻 一子 (つじ・いちこ)

岡山県生まれ。フリーライター。旅行会社のPR誌の編集者を経て、1998年からフリーランスに。旅の雑誌を中心に活躍。

東洲斎写楽
「二世瀬川富三郎の大岸蔵人妻やどり木」
寛政6(1794)年
城西大学水田美術館所蔵

 電子書籍の登場で、出版の世界が大きく変わろうとしているこの時期に、ちょっと興味をそそられる展覧会がサントリー美術館で開かれる。江戸時代中期に活躍した出版人、「蔦重〔つたじゅう〕」こと蔦屋重三郎〔つたやじゅうざぶろう〕の展覧会だ。

 蔦重といえば、歌麿や写楽の名作を世に送り出したことで知られるが、ほかにも、江戸吉原の人気ガイドブック『吉原細見〔よしわらさいけん〕』の独占出版や、狂歌と浮世絵を合体させた豪華な狂歌絵本の刊行、当時の情勢を風刺した山東京伝〔さんとうきょうでん〕らによる戯作〔げさく〕の出版など、次々と話題の出版物を発行している。

 しかし彼は、単なる出版人ではなく、企画・制作・流通・販売まで手掛ける名プロデューサーでもあった。売れっ子の狂歌師や戯作者の人気に乗じて自分の店の「ブランド化」を図り、版元としての地位を確立。さらに、歌麿や写楽をはじめ葛飾北斎、十返舎一九〔じっぺんしゃいっく〕、曲亭馬琴ら、才能あふれる無名の新人を発掘して、流行作家に育て上げた。

 今回の展覧会では、歌麿の美人画や、写楽の歌舞伎役者絵・相撲絵、また、江戸吉原の遊女たちを描いた浮世絵、当時の情勢を風刺した戯作など、名プロデューサー蔦重が手掛けた出版物が一堂に展示される。蔦重の残した仕事は、“江戸メディア文化”の華を見せると同時に、出版とは何かを考えさせてくれそうだ。

 
 
 
 

歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎展
〈開催日〉2010年11月3日~12月19日
〈会場〉東京都港区・サントリー美術館(東京メトロ日比谷線六本木駅直結)
〈問〉03(3479)8600
  http://suntory.jp/SMA/

◆ 「ひととき」2010年11月号より

 

 

 

 

 
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