ルポ・少年院の子どもたち

2017年11月23日

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 「彼らにとって具体例はとても大切で、『プロフェッョナル』ですとか『情熱大陸』などを見せています。そこには必ず失敗や挫折があり、成功があることを理解させたいのですが、テレビを見るだけではなかなか伝えることができません」

 「驚いてしまうのは、彼らは大人たちはみんな失敗していないと思っていることです。30年、40年生きてきたら、いろいろな失敗があって当たり前なのですが、それをぜんぜんわかっていません。したがって、今回の講話も世の中の成功者の中にはたくさんの失敗を経験している人がいることを知る大切な時間になったはずです」

 「水府学院ではハローワークの講師の方やキャリアカウンセリングの方などからお話をいただくことがあるのですが、具体的な失敗例の話を聞くと、『えっ、先生でもそんな失敗をしているのか』と子どもたちは素直に驚きを見せます。外部講師の方たちが挫折からいかに立ち直り、逆境を乗り越えていったのかを具体的に話していただけるのは大変貴重な学びになりました」

少年犯罪は13年連続で減少

 警察庁の報道発表「平成28年における少年非行、児童虐待及び児童の性的搾取等の状況について」によれば、2016年における刑法犯少年の検挙人員は31516人で、前年よりも7405人(19%)減少し、04年から13年連続で減少記録を更新している。人口比でも7年連続で減り続けている。

 総検挙人員における少年の割合は13.9%とこちらも前年より2.4%減少している。

 その中で16年の再犯者数は11696人で、前年より2459人(17.4%)減少し、04年以降、こちらも毎年確実に減り続けている。

 再犯者が減少している一方で、再犯者率は37.1%と、98年から18年連続で上昇している。これは初犯者数の減少に比べ再犯者の減少が小さいためで、検挙人員に占める再犯者の比率が高まっていることを示しているためで、けっして再犯者が増えているということではない。

 過去に何度も書いてきたが、犯罪を減らすためには再犯の防止が極めて重要なのである。

 この数値のように刑法犯少年の検挙人員は年々減少し、再犯者も減少しているのは事実であり、現行の社会制度が正しく機能している表れだろう。

 ただ、少年による重大な犯罪が起これば、テレビでは切り口を変えて繰り返し報道し、インターネットには玉石混合で鵜呑みにはできない情報までが溢れる。そのため、少年犯罪は増加し凶悪化しているかのような印象を受けてしまうと指摘する声も多い。

 最後に佐藤次長の言葉で記事を締めたい。

 「世の中が再犯防止と言ってくれるだけで我々の仕事にやりがいが生まれます。それまでは一度の躓きも許さないという風潮がありました。それが近年、再犯防止をと言われるようになってきましたので、我々は少年院の仕事を知ってもらう機会を得るためにもっと努力しなければなりませんし、再犯防止のためには我々ももっと視野を広げてアンテナを立てていく必要があると思っています」

 「少年たちがここで勉強して、しっかりやる気を出して社会に戻っても、少年院に対する地域の正しい理解がなければ居場所を失ってしまいます。社会に偏見や差別があれば生きていくことが辛くなってしまう。そうなると、居心地の良いところに戻ってしまい、再び非行に走ることに繋がるかもしれません。正しい理解が進んで地域がしっかり受け入れてくれれば再非行は減るはずなんです」

 「現在の少年院は昔のイメージとは違って、しっかり勉強して、心が豊かになって社会に帰っていくところです。我々は地域の方々による参観の機会をとらえ、少年院の理念を伝え続けて、正しい理解が進むように取り組んでいきたいと考えています」

 

  
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