公立中学が挑む教育改革

2017年11月28日

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多田慎介 (ただ・しんすけ)

ライター

1983年、石川県金沢市生まれ。大学中退後に求人広告代理店へアルバイト入社し、転職サイトなどを扱う法人営業職や営業マネジャー職を経験。編集プロダクション勤務を経て、2015年よりフリーランスとして活動。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。

教員の間にも浸透する「麹中メソッド」と「目指す生徒像」

 中学校とは一体、何なのか。改めて投げかけるこの問いに対して、工藤氏の答えは明確だ。

「世の中はまんざらでもない。大人になるって素敵なことだ。そう思って卒業してもらえなければ、中学校の意味はないと思っています」

「環境問題や平和問題を積極的に授業で取り上げるのはいいのですが、世の中の負の側面を伝えるだけでは生徒たちもネガティブになっていきます。世の中に課題があるのは当たり前。それによって対立が起きるのも当たり前。大人たちはそれを乗り越えて解決しようとしているんだというポジティブな話をしていきたいんです」

 工藤氏はこの考えを「麹中メソッド*」という2つの柱にまとめ上げた。社会で再現できる学び方を身につけるための「スキル」と、社会へのモチベーションを高めるためにロールモデルを見つける「スイッチ」を生徒たちに持たせてあげたいと考えている。さらに、麹中メソッドに基いて「麹町中学校が目指す8つの生徒像」を掲げた。

*麹中メソッド:①社会で必要とされる学び方の習得を支援する ②個性・特性を伸ばす機会を支援する

麹町中学校が目指す8つの生徒像(平成28年度 千代田区立麹町中学校 学校経営方針より)

 手帳やノートの使い方、思考ツール、パワーポイントを使ったプレゼンテーション技術の習得など、工藤氏が進める教育はこの生徒像を目指して行われている。アフタースクールとして運営する「麹中塾」や英会話スクール、写真やプログラミングなどを学ぶサークル活動もその一環。集団を意識して行動する力を養うため、体育祭や文化祭における生徒の自主運営を推進し、生徒会役員が学校運営協議会に出席することで、生徒たち自らも学校改善のあり方について提案を述べるなどしている。

 工藤氏が麹町中学校に赴任して3年半。「目指す生徒像」は、生徒、保護者、そして教員の間にもかなり浸透してきている。

「目指す生徒像が明確になっているからこそ、『上位目標の実現を妨げる手段を選ばない』という選択ができる。目的と手段を履き違えてはいけないと訴え続け、教員にもこの考え方が定着してきたと感じられるようになりました」

「目指す生徒像に向かうものであれば、教員の裁量で自由に施策を考えられるようにしています。成功している企業が理念に沿って社員に大きな裁量を与えているように、この学校でも全員が裁量を持ち、主体性を持って学校運営にあたっていくのが理想です」

 いかに学校トップの校長とはいえ、たった1人で改革を進めていくことはできない。「慣例」や「前例の踏襲」が重視されがちな公立校ではなおさらだ。事実、工藤氏の改革は、職員室に小さな狼煙を上げることから始まったのだった。

前回の記事:「話を聞きなさい」なんて指導は本当は間違っている

多田慎介(ライター)
1983年、石川県金沢市生まれ。大学中退後に求人広告代理店へアルバイト入社し、転職サイトなどを扱う法人営業職や営業マネジャー職を経験。編集プロダクション勤務を経て、2015年よりフリーランスとして活動。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。

  
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