政治・経済

2017年11月29日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 生体認証技術は、長らく日本メーカーの独壇場だったが、他の製品と同じく、中国など新興国勢に急速に市場を奪われつつある。前述の通り、指紋認証はレッドオーシャン化し、技術力が求められる「顔認証」技術においても、最新のiPhoneXでアップルが採用したのは、日本企業の技術ではなかった。それでは、これから日本企業が生体認証市場で生き残るためには何が必要となるのか?キーワードは「手ぶら」だ。

逆転のキーワードは「手ぶら」

 岐阜県大垣市に本店のある大垣共立銀行は、東日本大震災で多くの被災者が通帳やキャッシュカードを紛失して現金の引き出しに困ったことから、12年に富士通が開発した手のひら静脈認証を導入した。カードも通帳もなしに、手のひらをATMにかざすだけで現金の入出金や送金もできる「手ぶら」認証を日本で初めてATMで実用化した。現在の利用者数は49万人で、財布を忘れても現金が出せることから評判は良いという。導入コストは高くついたが利便性を優先した。

 同じく地銀の山口フィナンシャルグループでは、4月から日立の指静脈認証を使うことで「手ぶら」化を実現している。

 また、指の静脈認証技術で、ソニーから独立した天貝佐登史氏が創業したベンチャー、モフィリア(東京都品川区)。現在、主に海外でビジネスを展開し、中国と中東で複数の金融機関がキャッシュカードを使わない「手ぶら」認証を導入している。天貝社長は「『手ぶら』化すれば、利用者に受ける可能性は十分ある」と話す。

 その一方で、静脈の生体認証を導入しているメガバンクのATMで現金を出そうとすると、カードを入れて指か手のひらをかざして、パスワードを打ち込む動作が必要になり、面倒な感じが残る。そのせいかATMで生体認証の利用者は多くないのが現状だ。

 メガバンクでも「手ぶら」を導入しないのかと担当者に聞くと「銀行のATMで生体認証を導入た理由はセキュリティを向上させることで、利便性はあまり考慮されてない」と説明し、「手ぶら」化への関心は低い。

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