家電口論

2017年11月29日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

理論派のサムスンは、果たして市場を見ているのだろうか?

 単純に言うと、サムスンの技術は理論的ではあるが、「違いが分かり難い」と言える。有機ELテレビが「暗い階調まで見えるのでいい」と言われるのは、夜目が利く人のように「今まで見えなかったシーン」が見えるからだ。またHDRもSDRより「色がキレイだから」。非常に分かりやすいと言える。

 これに対しサムスンが提案しているのは、上乗せ。85%までカバーし、満足度の高い技術に、数%上乗せしている状態に似ている。確かに、理想を求める人、また世のマニアは頷いてくれる可能性があると思うが、多くの人が望むとは思えない。

 個人としては画質が上がっているのは分ったし、あった方がいいのも分かる。しかし、「なければならない技術なのか?」と感じたのも事実だ。

 このようなレベルの技術は技術難易度が上がり意外と開発費などが掛かることが多い。今回10万円高くなると言われたらどうか? 例えば50インチ 4K、HDRの高級テレビが30万円だとする。その時、数%画質UPさせました。しかし価格は、33%上がりますということになる。今回サムスンで感じたのは、そんな感じの違和感だ。

 サムスンの中核をなすメンバーは、誇りも高いが、頭もいい。私が過去、付き合ったことのあるメンバーもそんな人たちだった。ただそれだけに「理に走りやすい」感じを受けたのも事実だ。今回もそんな感じがする。理論は正しい。しかし人はいろいろな人がいる。理論の想定外の人など、いっぱいいるというわけだ。

 正直な話、ここ数年で、これほどサムスンの展示に対し魅力を見いだせなかったのはショックだった。理に走りすぎ、ユーザーを見ていない。そんな感じだった。

智に働けば角が立つ

 日本のメーカーは、ソニーにしろ、パナソニックにしろ、パネルを一デバイスと見なし、そのデバイスを自分の思う通りにコントロールすることにより、独自性を出している。それに対し、『テレビでパネルが作られないと競争力が落ちるのでは』と言う人もいる。それは正しいだろう。しかし、ソニー、パナソニックの有機ELテレビは、一目置かれていることは見て取れた。

 世界でもトップシェアを誇るサムスンだが、それは技術の最先端のマニアが買うテレビから、価格しか見ないで買う人まで含めてのシェアを指している。ちなみに、世界でも目利きが多いとされる日本市場で、現在サムスンはテレビを売ってはいない。

 今回、「4K」のペアとしては、基本「HDR」があれば、かなりのユーザーが満足できるのではないかと思うと共に、夏目漱石の「草枕」の冒頭が頭をかすめた。

『山路を登りながら、こう考えた。智に働けば 角が立つ。 情に棹させば流される。意地を通せば 窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。』

 サムスンは賢すぎるように思うのは、私だけだろうか?

  

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