ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2010年11月10日

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クリス・ネルソン (Christpher Nelson)

政治ジャーナリスト

アメリカのシンクタンク「サミュエル・インターナショナル・アソシエイツ」所属。特に日本、中国・台湾、朝鮮半島問題に焦点を当てたアジア外交政策のコンサルタント。1970年より下院外交委アジア小委員会のスタッフや上院民主党政策委員会のアジア政策顧問などを歴任した経験により、議会のみならず米政権の内情に詳しい。現在は、外交政策や通商問題のインサイダー情報誌「The Nelson Report」発行。

 今月のコラムを書き始めた時、バラク・オバマ大統領はちょうどアンドリュース空軍基地に向かっているところだった。長いフライトでインドに飛び、その後、インドネシア、韓国、日本を歴訪するためだ。

 ということで、WEDGE Infinityの読者の皆さんは、直接会うことはないにせよ、大統領をテレビの「生放送」で見ることになるだろう。さて、皆さんが目にするのは、一体どんな人だろうか?

 これは、ここ数日間、多くの米国人と大多数の民主党支持者が自問していることだ。また、11月2日の中間選挙で議会多数派の民主党が劇的な大敗を喫するかなり前から、我々の頭の中で膨らんでいった疑問でもある。

 誰もが同意することが1つある。2004年の民主党全国大会で世界が恋に落ちた、印象的で、カリスマ性があり、人の心を動かす「オバマ」がすっかり影を潜めてしまったということだ。

「(共和党支持の)赤い州もなければ、(民主党支持の)青い州もない。唯一あるのはアメリカ合衆国だ」という、あの見事なスピーチも消え失せた。これは我々が皆、本当であることを、あるいは、いつの日か本当になることを、心から望み、祈っている米国の可能性への賛美だった。

 今、我々が目にしている人物は、かなり趣が異なる。もちろん、大統領という職の重圧からすれば、それも無理はないだろう。

 だが、これはオバマ大統領にまつわる極めて重大な疑問になりつつある。米国を率いていく能力、正しい政治判断を下す能力、大統領と協調する気などないことを極めて明白にした「台頭する」共和党と力を合わせる方法を見つける能力が問われているのだ。

 この難問に脚色を添えるかのように、本稿を執筆している最中に、米連邦議会下院で超党派の協調が実現する可能性(現実的には、ゼロではないにしてもほんのわずかだった)が、どうやら崖から落ちて消え去ってしまった。ナンシー・ペロシ下院議長が、来年1月に新議会が召集された時に、新たに選出された共和党議員が過半数を占める下院で民主党院内総務に立候補すると発表したからだ。

 ペロシ氏は共和党が誰よりも好んで憎む民主党議員だ。実際、共和党全国委員長のマイケル・スティール氏はこのニュースを聞いて、まさに弾けるように喝采した。

 ペロシ氏の決断は、好むと好まざるとにかかわらずオバマ大統領が直面するジレンマを浮き彫りにしている。つまり、2012年の大統領選に向けて取るべき最善の方針は、国益を追求し、共和党との妥協と超党派の協調を模索することなのか、それとも、多くの共和党関係者が自党の指導者層に望んでいるように、分別を持つことは自分たちの野心にとって危険であり、唯一の「男らしくある」道筋は戦うことなのか、ということだ。

 読者もご存知のように、政治家は国民の利益が自分の利益と重なるようつじつまを合わせる天才だ。

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