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2017年12月5日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

「レースカーそのものも、昔はものすごく操作が難しいものだったが、今は様々なアシスト機能がついてそれほどでもなくなった。ゲームのシミュレーションなんかも出て、誰でも運転できるもの、みたいな誤解も生まれていると思う」という同選手。しかし機能の向上はドライバーの安全を考慮したものでもあるのでは? と問うと、「そういう言い方をされるけれど、個人的にはドライバーの安全と車の機能向上は別のパラダイムで語られるべき問題だと思っている。車の機能がいくら向上してもクラッシュはなくならない。完全になくしたいならもうAIロボティックレーサーだけでレースをするべきだね」と答えが返ってきた。

 同選手は「もっとコックピットの中がどうなっているのか、ドライバーはどんな操作を行い、どんな判断を行なっているのか、というようなこともレース中継の一環として見せていったほうが良いと思う。人間がどれほどのチャレンジを受け、それに打ち勝とうと努力しているのか、そういうことも見て欲しい」という。

ガソリン車、HV、EVで競わせる

 話題を変えてEVのレーシングについて聞いてみた。現在ではフォーミュラEのようなEVレーシングも存在する。同選手は「EVレーシングにももちろん興味はある。テスラは初速度加速(停止状態から時速100キロ到達まで)が世界最速の車を作っているけど、加速があってもレースカーとして成功するとは限らない」と言いつつも、「でもEVレース、というようなカテゴリーはフェアじゃない、と思う。人間が作り上げたテクノロジーを本当の意味で競い合うなら、ガソリン車、ハイブリッド、EVのレーシングカーを全て一緒に競わせるレースも必要なのではないか。ストリートカーレベルではそういうレースは存在するけど、サーキットレースでは実現していない。そういう、全てのカテゴリーのレースカー、そしてAIと人間のドライバーが同時に競い合うようなレースが実現したら、とても面白いと思うよ」と語ってくれた。

 自動運転が実現すれば車の運転とは「危険」で「野蛮」なものになる、という論調も今回のオートショーの基調演説ではみられた。しかしその危険で野蛮なことのために巨額の投資を行い技術を進めてきたメーカー、そしてそれに果敢に挑戦してきたレーサー達が車の性能向上に貢献してきた、とも言える。モータースポーツの未来はAIによる衝突回避などが導入されることがあれば、それは観客側のエキサイトを奪い、スポーツ全体の衰退につながるかもしれない。ヒルデブランド選手の言うAIと人間のレーサーとの対戦、近い将来本当に実現する可能性もあり、モータースポーツは今後姿を変えていく可能性がある。

  

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