あの負けがあってこそ

2017年12月12日

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 背景には、その先が描けないほど世界との隔たりが大きく、日本のハンドボールが置かれていた状況が厳しいものだったということがある。

 「2005年から2006年はジェットコースターのように落差の激しいときでしたが、僕の人生にとって一番いいときだったと思っています。運動音痴がハンドボール選手になって、日本代表のキャプテンになって、チームを引っ張って世界を目指していたんですから」

 と先の質問の答えが返ってきた。

 

負け続ける組織、勝ち続ける組織

 「ハンドボールは僕にいろいろなことを学ばせてくれました。

 僕が入社したころの大崎電気は、練習量は多いし練習時間も長いし、でも、どうやったら勝てるかわからないようなチームでした。誰もさぼっていないし全員が頑張っているんです、でも、それだけでは勝てません。

 それは優勝してわかったことなのですが、勝つ前は勝ちたいという思いなんです。もしかしたら勝てたらいいなぁくらいだったかもしれません。勝てると思ってやっていなければ勝つことなんてできません。勝って、さらに強くなってくると勝てるから、勝たなきゃいけないに意識が変わっていきました。この違いは成功したり、勝ってみなければわからないことなのです」

 東は続ける。

 「負け続けている組織には負け続ける理由があります。勝ち続けている組織にも理由があります。負け続けている組織の人間には勝つ方法がわかりません。変わらない組織や人を変えることは難しく、自分たちだけで成長するには限界があります。停滞した組織を変えるのは、やはり人です。勝ち続ける文化を持った人から学ばなければ変わることはできません」

 大崎電気が強豪チームに変わったきっかけは、ある実業団チームの活動が休止して日本代表クラスの選手が移籍してきたことに始まる。彼らの意識や言動はそれまでの大崎電気とは異なるレベルだった。それが一段階、大崎電気を引き上げたと東は言う。

ハンドボールをメジャースポーツにする!

 東は2009年に引退後、早稲田大学大学院に入学しスポーツマネジメントを学んだ。ハンドボールが抱える問題点を突いた論文で優秀論文賞を受賞。2012年日本ハンドボールリーグ委員に就任。その後、マーケティング部新設に関わり初代マーケティング部長に就任するなど、日本ハンドボール協会に貢献するも、組織内部における立場に限界を感じて独立を決意。

 現在は独自のアイデアや人脈を生かして、多方面からハンドボールをメジャースポーツにする活動を続けている。キーワードは「ハンドボールをビジネスにする!」である。

 

 「僕がいうハンドボールのメジャー化とは、ハンドボールで飯が食えるようにすることです。選手はもちろん、取材をする人や放送をする人など、ハンドボールに携わる様々な人がビジネスとして食えていけるようになることがメジャーなスポーツだと考えています」

 現在は(株)サーキュレーションの経営コンサルタントを経てバリューアップ推進室のパートナーを務める傍ら、(株)藤商(埼玉県吉川市)のFujisho Neo Sports Project GMとしてハンドボールチームの強化と「スポーツ&ビジネス」、「スポーツ&地域貢献」、「スポーツ&人材育成」など幅広い取り組みを行っている。

 また、老若男女、健常者、障害者の区別なくみんながスポーツを楽しめる「世界ゆるスポーツ協会」のアンバサダーや、みんなを熱狂させるスポーツを活用して社会を変える活動「HEROs」のアンバサダーといった活動を行っている。

 「アスリートには努力する習慣があり、コミュニケーション能力が高い人が多い。それに一流になるためのトライ&エラーを繰り返して問題を解決する能力を高めてきた人たちです。また、トップに立つためのアイデアを磨き続けてきた人たちです。これを社会で活用できれば大きな力になれるはずです。引退したアスリートが誰かに助けてもらうんじゃなく、アスリートだからこそ社会を支える存在になれるはずです。僕はそんな社会を築きあげたいと思っています」

<東俊介プロフィール>
石川県出身。中学1年からハンドボールを始め、高校、大学、U-20などで活躍。
大崎オーソル(大崎電気)では9度の日本一を獲得。キャプテンを務める。
また、日本代表のキャプテンとして世界選手権アジア予選をはじめ幾多の国際大会を経験。
2009年3月に現役引退後は、早稲田大学大学院にてスポーツマネジメントを学ぶ。
日本ハンドボール協会などを経て、2016年にサーキュレーションに入社。
現在は(株)藤商(埼玉県吉川市)のFujisho Neo Sports Project GMを務める

  
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