WEDGE REPORT

2010年11月17日

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安井明彦

みずほ総合研究所調査本部 ニューヨーク事務所長。
1968年東京都生まれ。91年東京大学法学部卒業、富士総合研究所(当時)入社。在米 日本大使館、みずほ総合研究所ニューヨーク事務所、同調査本部上席主任研究員などを経て、2007年より現職。著書に『ブッシュのアメリカ改造計画~オーナーシップ社会の構想』(共著、日本経済新聞社)『ベーシックアメリカ経済』(共著、日経文庫)など。

18日には再上場、7~9月期決算では、北米での販売増に加えドル安が追い風となり、20億ドル弱の純利益を確保した米ゼネラル・モーターズ(GM)。
リーマンショック後の破たんから約2年。一見順調に回復を遂げつつあるように見えるGMだが、その足元には多くの課題や不安が山積しており、その前途は多難である。

  経営再建中の米ゼネラル・モーターズ(GM)社が、新規株式公開(IPO)の日を迎えた。一方で、11月5日に投票が行なわれた議会中間選挙では、GM救済策に批判的な共和党が躍進を遂げた。米国政府とGMの距離感は開いていく方向だが、GMが完全に自立を果たすまでには紆余曲折も予想される。

GM救済は、オバマの得点にはなりえず

 「(米国政府による危機対応のなかで)自動車会社の救済策は、議論の余地なく成功だったと言い切れる数少ない取り組みの一つだ」。

 バラク・オバマ政権でGM、クライスラー社の救済策を指揮したスティーブン・ラトナー氏が、当時を振り返った近著に記した言葉である。

 実際に、GMは着々と再建への道を歩んでいるようにみえる。今年のGMの純利益は、2004年以来の黒字を確保する見込み。4月には政府による融資が5年前倒しで返済された。今回のIPOによって、政府による株式保有比率も50%を割り込む水準にまで低下する見込だ。

 もっとも、世論の評価は厳しい。救済を決定した時点の米国政府にとっては、GMの破たんを傍観することには、「関連産業を含めた大量の雇用喪失」という大きなリスクがあった。当時の米国経済は極めて脆弱であり、大型倒産のショックに経済が耐え切れたとは限らない。しかし経済危機の緊迫感が過ぎ去った今となっては、いくら政権が「100万人の雇用を救った」と主張しても、失業率がいぜんとして高止まっている以上、有権者には実感が湧かない。むしろ、一連の危機対応策への幻滅は、先の議会中間選挙で民主党が大敗した大きな要因となった。GMのお膝元のミシガン州ですら、民主党は州知事と下院の二議席を失っているのが現実だ。

刻々と変わっていくGMを取り巻く環境

 中間選挙での共和党の躍進には、GM救済策を根本から覆すほどの影響力はない。たしかに「小さな政府」を謳う共和党は、自動車会社の救済に批判的だった。しかし、IPOの実施に象徴されるように、既に救済策は出口を向いている。また、上院では民主党が引き続き多数党を維持しており、オバマ大統領の存在に鑑みても、現在の共和党の政治力には限界がある。

 自動車会社にとっては追い風が吹く可能性すら指摘できる。オバマ政権と議会共和党の対立が強まると予想される中で、電気自動車の開発支援は、両者が歩み寄れる数少ない政策分野として取りざたされている。

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