世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年12月25日

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 ロヒンギャ問題は人権尊重の問題です。国際社会は第2次大戦後、紆余曲折をしながらも、人権問題は国際的関心事項であるという考え方を形成してきました。

 中国は、こうした考え方に真っ向から異議を唱え、「人権問題は国内問題である。外国が容喙するのは内政干渉である」と言ってきました。中国は世界の潮流に反した行動をしており、これについては、批判をしていくということでしょう。

 アウンサン・スー・チーのロヒンギャ問題についての対応は、人権の尊重を含む民主化の旗手としての彼女にふさわしいものとはとても言えません。アウンサン・スー・チー自身、米国その他の「人権問題は国際関心事項」という考えに基づく支援によって支えられてきた歴史があります。軍事政権当時、西側が彼女の問題はミャンマーの国内問題であるとの姿勢をとっていたら、今の彼女がいたかどうかも分かりません。

 アウンサン・スー・チーは12月1日、3度目となる訪中をしています。また、ミャンマー政府が11月23日、「近隣国間に起きた問題は2国間交渉で解決されるべきである」という王毅提案をなぞった報道官声明を出していることを見ると、アウンサン・スー・チー政権の対中傾斜は明らかです。国際社会の容喙を嫌っているのです。

 それでは、日米欧はどう対応すべきなのでしょうか。

 ミャンマー制裁を復活すべきとの声がありますが、これはミャンマーの中国接近をもたらすだけでしょう。これを避けるような対応が必要です。11月15日、ティラーソン国務長官が短時間ミャンマーを訪問、「民族浄化」に苦言を呈しましたが、米政権は今回のロヒンギャへの民族浄化に直接関与した軍人など狭い範囲の人に限って制裁するが、広範な政治・経済的影響を持つ制裁はしないとしています。賢明な対応です。

 西側はアウンサン・スー・チーにそれなりの投資をしてきたのであり、「民主化の旗手」としての彼女を大切にし、彼女の権力の限界も踏まえ、辛抱強い対応が要ります。中国がミャンマーを取り込もうとしているのは王毅の訪問で明らかであり、対抗する必要があります。

 ミャンマーにアウンサン・スー・チー主導の政権ができた後、同国に進出した日本企業は多いです。ロヒンギャ問題でミャンマー政権と西側との関係悪化はこれらの企業を心配させているでしょうが、まだ引き上げずに粘るべきでしょう。そうしないと、「一帯一路」の成功例を支援することになりかねません。

 中国は、南シナ海でも関係当事者での話し合いを重視するとしており、自らの近隣への国際社会の関与を排斥しようとしています。しかし、航行の自由も人権も、国際社会全体の関心事項です。

  
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