今月の旅指南

2010年12月4日

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辻 一子 (つじ・いちこ)

岡山県生まれ。フリーライター。旅行会社のPR誌の編集者を経て、1998年からフリーランスに。旅の雑誌を中心に活躍。

 浅草の年の瀬の風物詩として知られる羽子板市。浅草寺の境内におよそ30軒の業者が露店を連ね、羽子板を買い求める客でにぎわう。

江戸時代には歳の市で売られていたものの1つだった羽子板。
今では羽子板市となり、師走の年中行事として人気だ

 「昔はお正月というと女の子が羽根つきをして遊んだものです。その頃は板に絵を描いた簡素な羽子板がよく売れましたが、今は、正月の床の間を飾る縁起物の押し絵羽子板が主流です」

 と話すのは、東京羽子板商組合組合長の野口豊生〔とよお〕さん。大きさは、手のひらサイズの小さなものから1メートル80センチもある大きなものまでいろいろだが、どの羽子板も華麗で精緻。見事な出来栄えだ。

 そもそも羽根つきは、神社などで行われていた魔よけや占いの神事だったとか。それが宮中の正月の遊びや、贈り物に用いられるようになるのは室町時代以降。

 「羽子板の羽根が、病気を運ぶ蚊を食べてしまうトンボに似ていることから、羽根を飛ばして無病息災を願ったといわれています。厄災を祓い、幸福を祈る気持ちが込められた羽子板が、お正月の遊びや贈り物としてふさわしかったのでしょう」 

 江戸時代に入ると庶民の遊びとして浸透し、デザインや色彩も派手になっていった。さらに、江戸中期には、当時流行していた歌舞伎の人気役者の舞台姿を写した羽子板が登場。江戸の女性たちは贔屓〔ひいき〕役者の羽子板を競って買い求めたという。

 それから300年。今も売れ筋は歌舞伎物が中心だが、近年は、その年に活躍した著名人の似顔絵を描いた「世相羽子板」や、東京藝術大学デザイン科の学生とのコラボレーションによる斬新な羽子板も華を添えている。江戸時代から続く市だけあって、売り手と客との軽妙な値引き交渉や、客からのご祝儀、お買い上げの際の“手締め”といった、昔ながらの風習を垣間見ることができるのも面白い。

 「子どものための“お絵描きコーナー”や羽子板に手形を付けるコーナー、漫画家が羽子板に似顔絵を描いてくれるコーナーなど、買い物以外の楽しみもあります。師走の浅草に足を運び、伝統文化の一端に触れられてはいかがでしょう」

 
 
 
 

浅草寺の羽子板市
〈開催日〉2010年12月17~19日
〈会場〉東京都台東区・浅草寺境内(東京メトロ銀座線浅草駅下車)
〈問〉浅草寺 03(3842)0181
http://hagoita.co.jp/
http://www.senso-ji.jp/

◆ 「ひととき」2010年12月号より

 

 

 

 

 

 
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