世界の記述

2017年12月25日

»著者プロフィール
閉じる

宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

1976年、長野県生まれ。18歳で単身アメリカに渡り、ウエスト・バージニア大学外国語学部を卒業。その後、スペイン・バルセロナ大学大学院で国際論修士、同大学院コロンビア・ジャーナリズム・スクールで、ジャーナリズム修士。スペインの全国紙「エルペリオディコ」で記者経験後、南仏ペルピニョンとバルセロナを拠点にするフリー・ジャーナリストとして、欧州に止まらず、世界各地を取材し、月刊誌『世界』(岩波書店)、『文藝春秋』(文藝春秋)等で、報道記事やルポルタージュを発表している。共同通信・特約記者を兼務し、フランス語、スペイン語、英語、ポルトガル語、カタラン語を話す。著書に、『卵子探しています』(小学館)などがある。

 ドイツの戦略的芸術集団「政治の美」(ZPS、本部・ベルリン)は11月22日、ホロコースト慰霊碑を批判した同国右派ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢」(AfD)に所属するビョルン・ヘッケ氏の自宅前に建設したホロコーストのレプリカ慰霊碑24基を竣工した。

 中部テューリンゲン州のAfD党首を務めるヘッケ氏は17年1月、ベルリンに建てられたホロコースト慰霊碑について「ドイツ人は、首都中心に恥のモニュメントを建てる唯一の国民である」と演説。同党の執行委員会は、「ヘッケ氏が行った演説は党のイメージを損ねた」とし、彼に懲戒処分を与えていた。

ベルリンにある、ユダヤ人犠牲者を追悼する2711基ものホロコースト慰霊碑
(MICHEL SETBOUN/GETTYIMAGES)

 国内では、このニュースが大々的に報じられた。社会民主党(SPD)のラルフ・ステーグナー副党首は、「憎悪を扇動している」と述べ、法律違反に当たる行為だと警告した。

 こうした騒動に目をつけたのがZPSで、会員の一人は、「彼(ヘッケ氏)はとても危険な人物。党内に在籍してほしくない」と指摘。アートと政治を絡めた同集団は、ヘッケ氏の自宅前に、ベルリンにある慰霊碑同様の石柱をレプリカとして建設する行動に乗り出した。

 建設に先駆け、同芸術集団はクラウドファンディングを行った。建設費と2年間の維持費を合わせた2万8000ユーロ(約372万円)を大幅に上回り、竣工からわずか6時間で、4万3000ユーロの寄付金が集まった。

 ZPSはツイッター上で「ヘッケ氏は、モニュメントの大ファンであるため、彼の自宅前に建設した」と、皮肉を交えて投稿。「われわれは、正当な行為に対する恐れはない。すべては法の枠内で行動した。暴力的な活動家は、危険そのものである」と、イスラエルのテレビ局「i24ニュース」に訴えた。

 ZPSはまた、「同氏がベルリンの慰霊碑前で謝罪を行わない限り、レプリカを撤去しない」と述べ、強行的な態度を貫いている。

 このZPSの活動に対し、AfDは、「一家族のプライベートを破壊する目的があり、人間の尊厳を攻撃している」との声明文を発表。監視下で数カ月間、政治家の自宅前で作業を継続したことを非難した。

 ベルリンには、ナチスによって虐殺されたヨーロッパのユダヤ人犠牲者を追悼する「ホロコースト記念碑」が2005年に完成。2711基の石柱が並んでいる。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

◆Wedge2018年1月号より

 

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る