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2017年12月28日

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井上久男 (いのうえ・ひさお)

ジャーナリスト

1964年生まれ。88年九州大学卒業後にNEC入社。92年朝日新聞社に転職。主に経済部で自動車や電機産業などを担当。2004年に独立。著書に『メイド イン ジャパン 驕りの代償』(NHK出版)。近著は『自動車会社が消える日』(文春新書)。

完成検査員資格の要件はメーカー任せ

 しかも、資格者になる要件が、法や通達で決まっているわけではなく、メーカー任せ。言葉は悪いが、適当に研修を受けさせて「有資格者」と言えばそれで済む話だ。さらに、海外ではこうした規制がないため、今回の渦中でも、同じ国内工場で生産する輸出車両の出荷は止まらなかった。

 こうした状況から「タスクフォースは、制度維持ありきではなく、この検査制度自体が必要なのかといったところまで踏み込んで議論してほしい」(大手メーカー技術者)という意見も出始めている。

 ところが、この制度は、車検制度とも密接に関連。国が認定した整備工場でないと車検は受けられないために、役人の天下り先の業界団体があるなど、制度自体が国交省の「利権」である面は否定できない。このため簡単には制度は変わらないとの見方もある。

 こうした古い制度やシステムが、日本企業の競争力の向上を阻害している。監督官庁の特権意識や国際感覚の低さも関係しているが、大企業側にも問題はある。

 実は日本では、安全や品質に関する発想自体が時代遅れになりつつある。最近、自動車業界で注目されているキーワードの一つが「バーチャル・エンジニアリング」だ。ものづくりのプロセスでバーチャル・リアリティ(VR)の技術を使うことで、現物での試作を減らしても性能や安全性が確保できることなどに利点がある。このため、開発の効率性を求める欧州で取り組みが進んでいる。

 このバーチャル・エンジニアリングは別名「モデルベース開発(MBD)」とも呼ばれる。宇宙探査機の制御ソフトウェアなどの開発で培われ、使用条件などを実際に確認できなくても、その条件を想定して開発する手法だ。「モデル」とは、設計仕様を作るための数式・データモデルのことで、通常は開発試作の段階で実物を作って「モデル」を導き出すが、机上での計算ではじき出すことから、開発期間が短縮される。

 このMBDを使って、効率的に開発されたのがマツダの「スカイアクティブエンジン」だ。マツダは2000年代半ばに経営危機に陥った中で、少ないリソースでの開発を目指し、MBDで結果を出した数少ない日本企業の例だ。この開発ツールを提供したのはドイツのdSPACE社だ。

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