家電口論

2017年12月30日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

氷箱の中の鱈が加熱調理された

 発表当日、独・ミーレのイベント会場は、招待を受けた各国招待客、メディアでごったがえしていた。シェフが取り出したのは、分厚い氷の板。それで組み合わせて小型の氷の箱を作り上げる。中に木の枝を入れ、白い鱈の身を並べて入れる。そして氷のフタを。そして、新しいが、どんな機能か分からないオーブンレンジへ。「7分後には調理できます!」とシェフは宣言する。

(turk_stock_photographer/iStock)

 どんな料理をしたいのか。とにかく時間が短い。オーブンで魚を焼くときの、約半分だ。第一、氷箱の中の鱈に熱が通るのか、分からない。電子レンジなら水分子を振動させるので、熱を起こすことができるが、氷は溶けるので庫内は水浸しだろう。少なくとも鱈を調理するには時間足らず。定評あるミーレのオーブンでも避けられない結果のはずだ。

 いろいろ考えていると、7分などあっと言う間。オーブンから出された氷箱は表面がちょっとつるんとした感じだが、ほぼ変わっていない。中には多少水が溜まっている程度。木の枝を入れたのは、加熱調理をした鱈を水に浸さないためだっだ。
で、鱈は? 見事均一に熱が通り、調理されている。

 
氷箱の中の焼けた鱈(上)

 

そして謎が謎を呼んだ

 次はサーモンにアルミホイルを巻いて、金属パレットに入れ、オーブンへ入れる。金属もの、は電子レンジでは禁じ手の一つ。火花が出て危険なためだ。音もする。バチバチと、いかにもやばそうなやつ。しかし、今回は皆無。オーブンで焼いたのなら、熱の半分は赤外線。アルミにはばまれますので、巻いたところと巻かないところで、焼きが違うはず。しかし、そんなことなく、均一に加熱調理されていた。

電子レンジで調理することが禁じられているアルミホイル巻&金属皿を使用 二皿目はサーモン。アルミホイルの有無に関わらず均等に調理されていた。

 で、最後は外側にワックス(蝋)を周囲に付けた豚肉の塊。熱だとワックスが溶けベトベトになるはず。これもワックスを溶かさずに肉だけ焼けた。

レアに近いミディアムに肉は焼けたがワックスはそのまま。

 今までのオーブン、電子レンジ、では無理な調理ばかりだ。実は、この普通でないオーブンレンジには「電磁波」が使われている。電子レンジに使われているマイクロ波も電磁波。では、新型オーブンレンジも同じかというと、違う。周波数が違うのだ。食材が持つ水分ではなく、食材そのものにエネルギーを送り込み、食材そのものが発熱、自らを加熱調理するのだ。

ダイアログオーブンの扉。電波を閉じ込めるためのすごく分厚い。

 この周波数の電磁波は、氷も、金属も通過する。鱈の場合は、氷箱の中の鱈だけ、加熱する。このため氷箱を溶かすことなく中の鱈調理ができたわけだ。また、食材の周りが高温環境になくてもいいので、予熱も要らないし、加熱も手早い。省エネレベルは分からないが、鱈の調理が約半分の時間で済んだことを考慮すると、エネルギーも約半分ですむことになる。50%、時間もエネルギーも節約できるとなると、今のオーブンレンジと全く別物と考えてもイイ商品だ。

 アルミホイルが巻いてあっても同様だし、ワックスに覆われていても、中身だけ調理することができるのだ。

 使用する周波数は欧州の携帯電話と同じ。だが、可変だという。調理していく内に食材も変化していく。それに合わせ、周波数を変えていくそうだ。食材と対話しながらコントロールしていくこのオーブンレンジをミーレは「ダイアログ(対話)オーブン」と名付けた。実は、このダイアログオーブン、日本メーカーのように、センサーをごっそり付けてはいない。電磁波のエネルギーは食材にのみ働くので、食材にどのくらいエネルギーを渡したのかで計るわけだ。出した電磁波と、使われなかった電磁波の差で計算する。実にシンプルな話だ。電磁波のエネルギーが他に使われないからできることでもある。

うねうねと曲がりくねっているのはヒーター。その影にアンテナと、電磁波の強さを計るセンサーが付いている。

 先ほども書いたが、食材ダイレクト加熱なので超省エネ。パーティ料理の一つ「子豚の丸焼き」は欧米で大人気だが、調理にだいたい7〜8時間掛かる。それが、2〜2時間半でできるという。ミーレによると計算方法にもよるが、70%近い省エネが可能だという。凄まじい実力のオーブンだ。ミーレの懐の深さに驚くばかりだった。

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