前向きに読み解く経済の裏側

2018年1月9日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

ゼロ金利とゼロ成長で、銀行は余裕を失いつつある

 今回の背景には、ゼロ金利とゼロ成長によって銀行の収益環境が悪化したことがあり、「背に腹は代えられない」ということになったのだと思われます。将来的にはフィンテックなどに銀行の仕事が奪われるという懸念もあるようですし。

 ゼロ金利は、銀行の預金部門を赤字化します。集めた預金は経理部にゼロ金利で貸し出すわけですから、預金部門はコストがそっくり赤字になるわけです。マイナス金利ですから、その分も赤字が増える計算ですね。

 マイナス金利に関しては、別の方角からも銀行決算を直撃します。銀行は、預かった預金を日銀に預けると金利をとられるし、他行は借りてくれないし、金庫に札束を入れておくには大きな金庫を買う必要があるので、多少の無理をしても貸出を増やそうとします。しかし、ライバル銀行も同じことを考えるので、ライバルから客を奪うことはできません。

 では、すべての銀行が貸出金利を下げたら、銀行業界全体の貸出が増えるでしょうか。それは見込み薄です。金利が多少下がっても、設備投資をする企業が増えるとは思われませんし、他業界から客を奪って来られるとも思われません。牛丼業界が値下げ競争をすればラーメン業界から客を奪ってくることができるかもしれませんが、銀行業界はそうではないのです。

 ゼロ成長も、銀行にとっては大問題です。一般の企業にとっては、ゼロ成長というのは去年と同じ売上高で去年と同じ利益を意味しますが、銀行にとってはゼロ成長だとビジネスが縮んで行くのです。

 ゼロ成長ということは、借り手は新たな設備投資をしません。設備が古くなった分を更新投資するだけですので、減価償却の範囲で足ります。そうなると、企業が毎年稼いだ利益が(配当される分を除いて)銀行借入の返済に使われることになるのです。

このあたりについては拙稿「ゼロ成長とゼロ金利が特に地銀に厳しい理由を考える」も併せてご覧いただければ幸いです。これは、地銀の苦しさについて記したものですが、メガバンクの苦しさも、本質は同じです。

銀行のコスト削減努力は十分か?

 銀行は、バブル崩壊後の金融危機時に、相当頑張ってコスト削減に励んだようです。傍目から見ると、まだ削れそうにも見えますが、実際は容易ではないのかもしれません。

 たとえば、融資の潜在顧客に各銀行の営業員が日参しているとします。各銀行の営業員が日参しても、誰も行かなくても、銀行業界全体としての融資額は同じでしょう。つまり、営業員の仕事は、各々の銀行にとっては重要ですが、銀行業界全体としては無駄なわけです。それなら一層のこと全行一斉に日参をやめていただき、そのコスト削減で零細口座維持手数料を勘弁してもらいたいですね。でも、各行の立場としては、「全行一斉なら構わないが、自分だけ止めるわけには行かない」という事でしょうから、難しそうですね。

 銀行の建物が立派なのも、無駄なように思えますが、これも難しいのかもしれません。世界的に銀行の建物は立派なのです。「建物が貧弱だと、客が安心して預金してくれないのだ。郵便貯金だけは、政府の信用だから建物が立派でなくても構わないのだが」と新入社員の時に教わった記憶があります。真偽のほどは不明ですが(笑)。

  
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