海野素央の Love Trumps Hate

2018年1月10日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

中間選挙への影響

 トランプ大統領は、「民主党やフェイク(偽)ニュースメディアが、ロナルド・レーガン大統領に使った戦略を持ち出して、私が精神的安定さに欠けているとわめいている」と自身のツイッターに書き込みました。レーガン元大統領は在職中、職務遂行能力を疑問視されたからです。同大統領は大統領職を退いてから、アルツハイマー病であることを書面で公表しました。

 「ロナルド・レーガン大統領は、同様の問題を抱えていたが、上手に対処した。私もそうするだろう」

 トランプ大統領は、精神的不安定さや職務遂行能力の欠如に疑問を持っている米国民にこうつぶやきました。同大統領は、暴露本の中で自身の精神状態を攻撃されたことに、かなり過敏に反応をしています。

 それに加えて、トランプ大統領は「不正直なヒラリー・クリントンも精神的状態のカードを使ったが、みんなが知っている通り、見事に失敗した」と書き込みました。前回の米大統領選挙でクリントン氏が、トランプ大統領の資質に焦点を当てようとしたのですが、逆にメール問題によって同氏の信頼性が問われる結果になりました。同大統領は、過去の事例まで持ち出して反論を繰り返したのです。

 トランプ大統領が「精神的に安定した天才」の投稿をすると、ネット上では副大統領への権限移譲を明記した「合衆国憲法修正第25条」の発動が話題になりました。同法修正第25条では、大統領がその職務上の権限と義務の遂行が不可能になった場合、副大統領と閣僚が米連邦議会に文書による申し立てを行います。現時点では、マイク・ポンぺオ中央情報局(CIA)長官らが同大統領の職務遂行能力を擁護していますので、同法修正第25条の発動の可能性は低いといえます。

 ただし、今回の暴露本の内容に対するトランプ大統領のヒステリックな反論によって、米国民は同大統領の精神的安定さの欠如を再認識し、不安感を増したことでしょう。中間選挙で与党共和党は、インフラ整備、移民制度改革及び社会保障を争点にするのに対して、野党民主党はトランプ大統領の資質を取りあげる可能性が高いといえます。

 世論が反トランプに傾き、全国的な運動が起きれば、民主党はトランプ政権に合衆国憲法修正第25条の発動を要求するかもしれません。仮にそうなれば、たとえ発動まで至らないにしても、バノン・ウォルフ両氏が中間選挙で民主党を助け、トランプ大統領にダメージを与えたことになるでしょう。

  
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