世界の記述

2018年1月18日

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大西康雄 (おおにし・やすお)

日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所・上席主任調査研究員

1977年早稲田大学政治経済学部卒、アジア経済研究所入所。駐中国日本大使館専門調査員、中国社会科学院工業経済研究所客員研究員、アジア経済研究所地域研究センター長、JETRO上海センター所長などを経て現職。

 2017年12月18~20日に中国共産党中央と国務院(内閣)共催で18年の経済運営方針を決める中央経済工作会議が開かれた。今回は習政権二期目が発足した直後であるだけに、例年にも増してその内容が注目された。各種報道を総合して重要点を整理してみる。

(iStock.com/Sky_Blue)

 第1のポイントは、第19回党大会で提起された「習近平時代の中国の特色ある経済思想」における当面の課題が示されたことである。「我が国の経済が既に高速成長の段階から質の高い発展の段階に転換した」という基本認識に立ちつつ、20年までの小康社会実現のための3大緊急課題として、①重大リスクの防止・解消、②精確な脱貧困、③汚染対策、が挙げられた。

 ①では、とりわけ金融リスク防止が重視されている。この背景には、地方政府の債務問題や不動産市場のバブル状態が未解決であり、加えて政府の制御の及ばない各種民間ファンドのP2P(インターネット経由の直接金融)が不良債務を生み出して、大規模な金融混乱が発生しかねないことに対する危惧がある。

 ②は、20年までに貧困家庭を解消するとの公約を改めて強調したものである。「精確」が意味するのは、特定の貧困層・貧困地域に狙いを定めて、その脱貧困に全力を挙げることであり、従来の脱貧困より効果的な施策の展開を強調したものである。

 ③は、国民の不満が最も高い大気汚染問題の解決を重点に生態環境全般の改善を達成するとの意思表示である。

 第2のポイントは、「質の高い発展」を軸に8つの重点政策を示したことである。列挙すると、①サプライサイド構造改革の深化、②各種市場主体の活力喚起、③農村振興戦略の実施、④地域の協調発展戦略の実施、⑤全面的な開放の新たな枠組み形成、⑥民生の保護・改善レベルの向上、⑦多様な住宅制度の確立、⑧生態文明建設の推進加速、である。

 これに李首相の会議総括演説や『人民日報』社説(12月21日付)を加味して18年の経済を展望すると、①マクロ経済バランス(特に金融の安定)に留意しつつサプライサイド構造改革を着実に推進する、②イノベーションを奨励し、民営企業を支援しつつ国有企業改革、財政金融改革を深化させる、③農村振興と同時に「一帯一路」などの新構想で地域発展に新たな活力をもたらす、④各種リスクを防止・解消しつつ脱貧困を加速する、⑤全面的対外開放のための新たな枠組み形成に努め、発展の中で民生水準を向上させる、という姿が浮かび上がってくる。

 これらが今後さらに肉付けされて、習時代の経済運営方針が固まっていくだろう。

  
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