この熱き人々

2018年2月21日

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吉永みち子 (よしながみちこ)

1950年、埼玉県生まれ。85年、『気がつけば騎手の女房』で大宅壮一ノンフィクション大賞を受賞。著書に『母と娘の40年戦争』(集英社文庫)、『怖いもの知らずの女たち』(山と溪谷社)、『試練は女のダイヤモンド』(ウェッジ)などがある。

 小松の作品を貫く死生観や神獣の世界を培ってきたのは日本の自然であり、日本の神々であり、日本の文化である以上、魂の故郷にしっかり腰を据えているほうが、高く、遠くに飛ぶ力を発揮しやすいのではないか。その後は、日本にいながらパリからもニューヨークからも作品は求められ、さまざまなギャラリーに展示されているのである。海外のキュレーターたちも、全身全霊で描く小松の作品には心を動かす力があると口を揃える。

 小松がよく使う言葉に「大和力(やまとぢから)」がある。さまざまな宗教観や文化が融合する和の共生という意味で使っているという。

 「和という方法をツールにして、いろいろな文化をキメラ化していく。それぞれの国にはそれぞれのスピリットがあって、神獣はそのどこにもつながって、世界に広がっていけるような気がします」

 キメラ。語源はギリシャ神話に登場する怪物で、頭はライオン、胴は山羊で、尻尾は蛇。生物学的には、同一個体内に由来の異なる複数の遺伝情報を持つもの。

 アートビジネスの世界に敢然と挑む現代性と、神々の世界につながる魂を訪(おとな)う前近代性。何やら、小松自身もキメラのように感じられてくる。そういえば、幼い小松の道案内をしてくれたという幻の犬はどうなったのか。

 「12歳の時、雪が降っているのに前を歩いて行く犬の足跡がないことに気づいて、思わず『あっ!』と叫んじゃいました。それから犬は出てこなくなって」

 見えなくなった山犬はその瞬間、体内に取り込まれて内から道案内をしているのではないか……。小松の作品に囲まれていると、ふとそんな想像までしてしまうのである。

こまつ みわ◉1984年、長野県生まれ。20歳の時に制作した銅版画「四十九日」が高い評価を受ける。2014年、出雲大社に絵画「新・風土記」を奉納。東京と長野に制作拠点を置き国内外で個展を開催、世界的なアートフェアにも出品するなど広く活躍中。

岡本隆史=写真

  
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◆「ひととき」2018年2月号より

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