科学で斬るスポーツ

2018年1月25日

»著者プロフィール
閉じる

玉村 治 (たまむら・おさむ)

スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト

小学校より野球をはじめ、大学では投手として活躍。スポーツを科学的に分析することを得意とし、バンクーバー、ロンドン五輪、ワールドカップサッカーなどで取材。

 南北合同チームの参加が決まったものの北朝鮮が不穏なにらみをきかす中、平昌五輪(韓国)が2月9日から始まる。前回ソチ五輪(ロシア)で、日本勢は長野五輪の10個に次ぐ史上2番目となる8個のメダル(金1、銀4、銅3)を獲得した。今回はそれを上回るほどメダルを狙える有望な種目が多い。中でも注目は女子スピードスケートと男子フィギュアスケートだ。見どころを2回に渡って紹介する。

 まずは、2016年10月に全日本距離別選手権から国内外のレース24連勝中小平奈緒(31、相沢病院)。バンクーバー、ソチに続く3度目の挑戦となるが、前回ソチの屈辱を胸にオランダに単身留学した小平は、連勝にも「金をとりたい」などの気負いやおごりは微塵もない。最大の敵は、自分と位置付け、「日々自分超え」をモットーに究極の滑りを追求している。

小平奈緒選手(写真:松尾/アフロスポーツ)

潜在力を開花させたオランダ留学

 限界に迫るスケーティング、スピード、体作りに科学的な視点を注いできた小平。ソチ五輪では、期待された500mで終盤失速し、5位に沈んだ。それが小平を大きく、たくましく成長させる原動力となった。

 真っ先に取り組んだのは、環境の変化。日本では母校、信州大学の恩師でもある結城匡啓コーチらに頼り切る「ぬるま湯」につかっていた。これを脱するためスケート王国・オランダに単身渡ったのは2014年秋。オランダはソチのスピードスケートだけで23個のメダルを獲得したが、その裏にはスケートが国民的スポーツとして受け入れられていることがある。海抜が低く、運河が多い同国では、冬に氷った運河の上をスケートで移動するのが普通だ。200kmレースなどもあり、競技人口は多く、スケートリンクなど施設などの環境も飛びぬけている。

 小平は、オランダのナショナルチームとともに練習し、長野五輪女子1000,1500mの金メダリストのマリアンヌ・ティメル、男子5000,1万mのジャンニ・ロメらの指導を受けた。もともと脚力があり、パワースケーティングでは、世界屈指の実力を備えていたが、五輪などの大舞台ではなかなか勝てなかった。しかし、オランダでの2年間で小平は、大きく変わった。まさに開眼したという言葉がふさわしい。

 それは「滑りの正解は一つではなかった」と語る小平の言葉に凝縮される。自らも研究し、一定の手応えを感じてきた、それまでの練習や強化法が絶対的なものではなくなったということを意味する。価値観の転換によって眠っていた潜在力がまさに開花した。

編集部おすすめの関連記事

関連記事

新着記事

»もっと見る