世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年2月6日

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 1月1日のトランプのツイートは衝動的なものだったでしょう。昨年8月、トランプはアフガニスタン戦略に関する演説でパキスタンがタリバンなどのテロ組織に隠れ場所を提供している事態はもはや黙視し得ないと強く非難し、その振舞いを直ちに変えてアフガニスタンでの戦争に協力するよう要求しましたが、12月初めのマティス国防長官のパキスタン訪問でも成果はなく、その苛立ちがトランプの衝動の引き金となったということだと思われます。上記社説はトランプの言っていることは正しいと言いますが、パキスタンに行動を変えさせるために米国はどうすべきかについては、結局あまりいい知恵がないことを告白しているに等しいです。

 社説は梃を使えと主張します。MNNAの地位の剥奪、テロ支援国家の指定の他にも、サウジアラビアやアラブ首長国連邦に働き掛けてパキスタンの出稼ぎ労働者を排除したり、両国におけるタリバンの資金集めを止めさせたり、といった手段は考えられるかも知れません。しかし、そういった手段も、次のような理由から、基本的にはパキスタンの行動を変えさせることにはならないでしょう。すなわち、いずれ米軍がアフガニスタンから撤退すれば国内で紛争が生ずるかも知れず、あるいは和平に向けて国内の勢力間の権力分有の政治協議が始まることがあるかも知れませんが、そういう事態を見据えれば、息のかかった手駒を温存しておくことがパキスタンにとって当然の戦略となります。いずれにしろ、アフガニスタンの戦争の継続をカラチ港からペシャワルを経由、カイバル峠を越えてアフガニスタンに至る唯一の補給ルートに頼っている状況では、米国が取り得る手段には限界があります。

 トランプはアフガニスタンに4,000名を増派し、総兵力は14,000名に達しています。トランプは、「人為的な時刻表に縛られた戦略というオバマ政権の過ちは繰り返さない」と言っていますが、何時までアフガニスタンで戦い続ける積りなのかは判りません。トランプは8月の演説で「性急な撤退は真空状態を作り出し、9/11の前に起こったようにISISやアルカイダを含むテロリストが直ちにこれを埋める」ことを戦争継続の目的に挙げています。他方、「自分の当初の直観は撤退だった」とも述べており、出来れば撤退したいのかも知れません。なお、この関連で、米外交問題評議会のマイケル・デンプシーが「No Longer a Haven for International Terrorists(昨年12月3日付NYT)」という興味ある一文を書いて、現状で米軍が撤退すればアフガニスタンがテロリストの温床となり米国がテロの脅威に晒されるという従来の常識に疑問を提起しています。同論説は、1月11日付け本欄でも紹介しています。

  
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