世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年2月9日

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 トランプは二国間の貿易赤字の解消を対外経済政策の柱としていますが、これは貿易赤字が米国の労働者の職を奪っているとの前提に立っています。これはトランプの支持層に訴える議論です。

 貿易赤字を交渉で解消しようというのは、赤字が相手国の不公正慣行によるものであるとの前提に立っての話です。すなわち、米国の輸出が少ないのは相手国が種々の障害を設けているからで、輸入が多いのは相手国がダンピングをしているからである、という理屈です。

 確かにこのような要因はある程度はあるかもしれませんが、貿易収支は基本的には競争力の問題で、競争力を決めるのは、ゼーリックの言う経済のファンダメンタルズです。

 それにもかかわらず二国間の貿易赤字を解消しようとするのは保護主義であり、経済的孤立主義につながります。それは、米国の世界経済からの撤退につながりかねません。

 米国はこれまで自由貿易を標榜してきたのみならず、そのルール作りに携わってきました。トランプは多国間の経済取極めに消極的で、WTOなどの世界経済システムに批判的です。しかし、それらは、米国が自ら世界経済システムの旗手の地位を降りることを意味します。

 トランプがやろうとしている貿易政策は、今や世界中にサプライチェーンを構築している米国の企業の足を引っ張ることになります。トランプはNAFTAから撤退しかねないですが、NAFTAが米国企業の北米における活動の基盤になっていることをトランプは理解していません。

 トランプ政権の2年目は、トランプの貿易政策が実施の段階に入り、大きな節目を迎えることになります。NAFTAについては、米国が紛争解決メカニズムの廃止や、自動車産業に関するルールの変更に固執すれば、NAFTAは分解する危険があります。

 日米、米中は小康状態にありますが、米国の出方如何によっては大きな摩擦を呼ぶ可能性があります。

 幸い米国経済は堅調ですが、トランプの貿易政策の展開により、米国経済、そして世界経済が揺さぶられる恐れがあります。

  
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