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2018年1月31日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

産經新聞元論説委員長

産經新聞元論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員などを経て、2015年6月から産経新聞社監査役。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

紙面に掲載されなかったインタビュー記事

 オウム犯行説は、その日の早い段階、毒物がサリンと断定された時から、メディアの間で広がっていた。早くも、その2日後には、山梨県旧上九一色村(その後、甲府市などと合併)にあった教団本部などを警視庁が別件の容疑で捜索した。 しかし、麻原教祖らが逮捕されるのは、その年の5月16日まで待たなければならなかった。

 逮捕当日、社会部に麻原インタビューの記事を出稿できると伝えたが、諸般の事情からインタビュー記事が日の目を見ることはなかった。
 
 地下鉄サリン事件は、日本国内にとどまらず、世界を震撼させた。思えば、新しい時代における新しい脅威を象徴する事件だった。

 地下鉄サリン事件が起きた年の秋、米上院政府活動委員会の小委員会が都市型テロ防止に関する公聴会を開いた。筆者は、夏にワシントン特派員として赴任していたので、この公聴会を取材したが、オウム真理教NY支部長らが証言したことから、米国民の関心を引いた。

 東京、モスクワなどオウム関連の都市に派遣された議会調査官が取りまとめた報告者が明らかにされ、日本政府からの情報として、オウムは自らへの捜査の手が伸びてきたことから、かく乱するために日米戦争を引き起こすことを画策。この年に11月に大阪で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)を標的にし、クリントン米大統領も攻撃対象になっていたという。

 FBI(連邦捜査局)の担当官は、「核や化学兵器による攻撃はテロリストの能力からみて無理とみられていたが、オウムはそれが誤りだったことを証明してしまった」と将来の大量破壊兵器によるテロ攻撃に強い懸念を示した。

冷戦後の新しい脅威の象徴 

 このころ、クリントン大統領は、冷戦終結後の新しい脅威として、「国際テロリスト集団の跳梁、国際犯罪組織、国際麻薬組織の非合法活動」などに機会あるごとに言及した。かならず、「トウキョー・サブウェイ・システムへのナーブ(神経)ガス・アタック」という枕詞を冠するのがつねだった。

 米情報機関で構成する国家情報会議が2012年暮れにまとめた「グローバル・トレンド2030」は、近未来の世界で主役を担うものとして非国家、非政府組織などをあげ、多国籍企業、大規模NGO、強大な研究機関などが、環境問題や貧困問題などで世界をリードしていくだろうと予測。これに加えて、テロリスト集団や犯罪者集団もやはり活動を活発させ、世界の安全保障への脅威となると分析した。

 2014年ごろからつい最近まで、シリア、イラクに偽似国家を作り上げ、暴虐非道の限りをつくしたイスラム教スンニ派過激派組織、「イスラム国」(IS)の暗躍ぶりをみるにつけ、これらの予測は不幸にして的中したというべきだろう。
 オウムはまさに、冷戦後の新たな脅威の象徴ともいうべき存在だった。

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