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2018年2月1日

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ウェイ・チョウ記者、BBC中国語

自由気ままに旅する日本のカエルを育てるゲームが、中国で大流行している。

日本のスマートフォンゲーム「旅かえる」が2週間以上、アップル社中国版アップストアの無料ゲームランキングで1位を占めている。

ゲームは日本企業ヒットポイントが開発したもの。日本語版のみだが、操作は簡単だ。

小屋に住む、かわいい緑色の小さなカエルを育てるゲームだ。カエルは小屋の中で食事したり、文章を書いたり、鉛筆を削ったりする。ときには、本を読みながらうとうとすることもある。

飼い主は庭先でゲーム内の主要通貨、クローバーを集めることができる。3時間ごとに庭をスワイプ(指を画面に触れたまま滑らせる)すれば、クローバー20本を集められる。もしくは、クローバーが育つのが待てなければ、実際のお金で買うことができる。

しかし、それ以外はほとんどカエルをコントロールできない。それがなにより、このゲームの面白いところだ。カエルはしょっちゅう家を出て、日本各地を自由気ままに旅して回る。

カエルがいつ旅に出るか、いつ戻ってくるか、何を持って帰ってくるのか、まったく分からない。出かけてから数時間で帰宅するときもあれば、4日間も戻ってこないこともある。

絵葉書やクローバー、おみやげを送ってくれることもあれば、飼い主に全く何もしてくれないこともある。

飼い主はまったく、カエルをコントロールできないし、交流もできない。飼い主にできるのは、放浪するカエルに、食事や道具、お守りを用意することだけだ。

親とはこうしたもの

シェンさん(27)はBBCに、「このゲームを気に入っている。カエルは好き勝手に動いているし、自分はあれこれしなくてもいいので」と話した。

シアンさん(25)はBBCに、友達が中国版フェイスブック「微信(ウィーチャット)」で写真を共有しているのを見て、自分も1週間前にカエルの飼い主になったと話した。

「仕事が退屈なので、職場でほぼ10分おきに自分のカエルをチェックしている。カエルが旅先から送ってくれる写真が、本当に素敵」とシアンさん。

「私が実家にいないと、うちの母親は早く戻ってきてと言うけど、いざ実家に帰ると今度は、どこか出かけなさいよと言われる。自分のカエルへの気持ちもまさにそれと一緒」とシアンさん。

「でもカエルが自分の写真ばっかり送ってくると、やきもきする。うちのカエルは人付き合いが下手で、友達も作らないの!」

「今日はネズミと一緒の写真を送ってきて、うれしくて泣きそうなった。カエルにやっと友達ができた!」

アプリに関する市場データを提供する米国拠点のアップアニー社の最新データによると、「旅かえる」は昨年12月の配信開始以来、中国のアップストアで390万回以上、ダウンロードされている。

中国のプレイヤーたちは、我が子のようなカエルのためにアプリ内課金で累計200万ドル(約2億2000万円)以上をつぎ込んでいる。

一方の日本では、アップストアとグーグルプレイで合計40万ダウンロード、ユーザー課金は累計10万ドル(約1100万円)にとどまっている。

では「旅かえる」の魅力とは一体何なのか?

「90年代以降生まれの世代にぴったりです。私たちは仕事で大忙しなので」とシェンさんは言う。

中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」で「旅かえる」が急速に広まるのを見て、シェンさんはすぐさまダウンロードした。そして今では頻繁に携帯でカエルの最新状況を確認している。

「アプリを開くたびに、どうなっているかわくわくします。カエルが旅をしているのか、どんな写真を送ってきたのか知りたい。まるで自分の息子です」

カエルが旅をしている間は、シェンさんは別の方法をみつけて時間をつぶす。

シェンさんはメッセージアプリ「微信(ウィーチャット)」で、「子供に巣立たれた90年代以降生まれの親が、ぬくもりを求めて寄り添う」グループを作っている。グループ内で若者たちは親心を共有し合い、カエルがいない時間を過ごしている。

中国では何かにつけてそうだが、「旅かえる」には政治的な側面も派生している。

プレイヤーの中にはカエルへの愛を、江沢民氏へのファン心理を結びつける人もいるのだ。

が驚くほど多くのファンを引き付けている現象「膜蛤」(カエルにひれ伏す=江氏を尊敬することを指す)に結びつける人もいる。

江氏は1989~2002年の国家主席だ。近年では、当時はまだ生まれていなかったような中国の若者たちから予想外の人気を集め、その現象は「膜蛤」(カエルにひれ伏す=江氏を尊敬することを指す)と呼ばれる。

江氏はその外見から、「カエル」の愛称で親しまれているからだ。

「自分のカエルに『長者』と名付けている」。中国・西南大学の学生リン・シーさんはウェイボーにこう投稿した。「長者」はネット上でよく使われる江氏の別のあだ名だ。

中国共産党は「膜蛤」については眉をひそめるかもしれないが、今のところカエルのファンは許容しているようだ。

中国共産党機関紙「人民日報」は、ゲームの人気を社会主義の「核心的価値観」を奨励する機会として利用している。つまり、もっと両親に会いに行くよう、若者に促しているのだ。

「旅するカエルは、実家を出た全員と同じだ」と人民日報はウェイボーに投稿した。

「子供の帰りを待つのはどんな気持ちか? さまようカエルの皆さん、どうか忘れずに両親に会いに行って」

(英語記事 Travel Frog: The cute Japanese game that has China hooked

提供元:http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-42899121

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