WEDGE REPORT

2018年2月15日

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田中淳夫 (たなか・あつお)

ジャーナリスト

静岡大学農学部卒業。出版社、新聞社を経て、主に林業を中心に取材・執筆。著書に『森と日本人の1500年』(平凡社新書)、『森は怪しいワンダーランド』(新泉社)など多数。

政策転換を正当化する自給率というマジックワード

 なぜ林野庁は、従来の方針を転換した補助制度を設けるのだろうか。

 「正確には伐採ではなく、伐った木をすべて集材して利用することに出す補助金です。そして全国で進む主伐時に再造林をしっかりしてもらうためです。面積の上限は20ヘクタールで、造林補助の中には獣害対策の費用も含めています」と林野庁は説明する。植え付け後の育林作業には別の補助制度を適用できるというが、実施するかどうかは山主次第だ。

 ただ政策の目的には木材生産量の拡大も入っているという。国は25年に木材自給率を50%以上にするという目標を掲げている(16年の木材自給率は約35%)。この数字を達成するためには、もっと木材生産量を増やさなければならない。しかし間伐による木材生産はそろそろ限界だ。そこで主伐を推進する方向に向かうのだろう。

 主伐に傾斜する理由は1950~60年代に大量に造林された森林が、伐期と定めた60年を迎え始めたことだ。だが伐期とは、苗を植える際に収穫する時期を人が設定するもの。木材不足の時代は40年と定めたが、その後60年に延ばした経緯がある。

 伐期の年限に科学的な裏付けはない。林齢60年程度では森林として若い方で、水源涵養機能や森林の炭素蓄積量、生物多様性などの公益的機能から見ても、まだまだ延びることが研究で示されている。欧米などでは、伐採樹齢の目安を100年以上にしているところも多い。

 一方で「林齢の平準化」も目的に掲げている。戦後の大造林が終わると、植える土地がなくなり若い森が少なくなってしまった。そこでボリュームのある50~60年生の木を伐って跡地に苗木を植えることで森を若返らせ、林齢を満遍なく散らすもくろみだ。

(出所)林野庁資料を基にウェッジ作成
(注)齢級とは森林の年齢を5年の幅で括ったもの。苗木を植栽してから5年目までが1齢級。 写真を拡大

 だが、それは日本の森林バイオマス(木材蓄積)の絶対量を減らすことでもある。若い木々の森が増えて高齢林が減るのだから、将来再び木材不足の時代を招くかもしれない。

 改めて振り返ると、近年の日本林業の問題点は国産材が売れないこととされた。そこで新たな木材需要をつくる政策を推進してきた。とくに大きかったのは国産材を合板の原料にすることだろう。それまで合板は熱帯産の広葉樹材が主な原料だったが、スギなど針葉樹材で合板をつくる技術を開発し普及したのだ。おかげで現在では国内生産の合板の原料の約8割が国産材に置き換わっている。

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