2024年4月20日(土)

東大教授 浜野保樹のメディア対談録

2010年12月31日

浜野保樹教授

浜野 中国へは?

亀山 中国大陸には興味があるんですけど、料金制度がよくわからないから予算が組めない。コンテンツだけ持って行っても、上がってくる収入が妥当なものなのかどうか、その判断すらできない。まあ、売ってしまってあとはご勝手に、とやるのは1つの方法ですが。これは、すでに各社やってると思います。

 他にもよくハリウッドの人が、提携話みたいなのをもってきて、僕に「会いたい」って言ってくるんです。

 初めのうちは尻尾振って会いに行ってたんだけど、よく話を聞いたら10人が10人、自分たちが日本で稼ぐのを手伝って、一枚噛んでくれって話ばかりです。

 だから海外には行かなきゃいけないとは思うけど、きちんと計画立てて、リスクつぶしてからでないと。先人たちが痛い目にあった話はいやってほど見聞きしてますし、彼らより僕らの方が優秀だとはとても思えないですから。

待望の「ノルウェイの森」、来年も新作続々

浜野 新作の「ノルウェイの森」は、ベトナム系フランス人監督の作品ですよね。

亀山 そうです。

2010「ノルウェイの森」村上春樹
©アスミック・エース、フジテレビジョン

 あれは、監督がトラン(アン・ユン)氏だからこそ、原作者村上春樹氏がイエスって言ったって面があったと思う。

 それを措いても、日本人監督だと考えすぎてしまったところがいっぱいあったんじゃないか、そこを外国人の目で、すぱっと割り切れという面があったと思います。

 外国人と組むことで、いろんな発見があるんだなってことを、あの映画で学びましたね。その延長上に、役者を中国人と韓国人がやって、監督はまた別の国の人がやりつつ、それを僕らでプロデュースするっていうのは、「あり」だと思いました。

浜野 亀山ブランド映画海外進出のモデル作品ですか、「ノルウェイの森」は。

亀山 いや、違います。ただ、村上さんの作品は全世界で読まれているから、この映画も外国で「外国語映画」として一定層に見てもらえるだろうなとは思っています。

 もしそうなら、役者がみな日本人で、日本語ばかりしゃべっていても、いいんじゃないか、と。実際、引き合いは欧州圏からとか、いろんな国からある。僕らがつくった中では、いちばん、たくさんの国の映画館で、文芸作品扱いでかかりそうな映画かなと期待できそうな手ごたえにはなってきています。

浜野 いま年間何本ペースですか?

亀山 だいたい10本を目安には組もうと思っています。

  「僕シリーズ」って言っているんですけど、関西テレビ系で「僕」って一人称の題名がつくドラマをやってたんですよ。草彅剛さんの主役でね。それを今度、映画でやります。ベースとなっているのは、SFショート・ショートで有名な眉村卓さんの実話なんですけど、奥さんがガンになっちゃって。その奥さんのためだけに、毎日1編、ショート・ショートを書いたっていうお話。テレビと同じく、草彅さんにご出演いただいて、奥さん役に竹内結子さんの配役でつくった映画が来年1月公開です。「僕と妻の1778の物語」っていう。それが、年明け最初の公開作品になります。

浜野 期待しています。長時間、ありがとうございました。     

(構成・谷口智彦)

亀山 千広(かめやま・ちひろ)
フジテレビ取締役、映画事業局長。
1956年、静岡県生まれ。80年にフジテレビ入社後、ドラマのプロデュサーとして、「あすなろ白書」「ロングバケーション」「踊る大捜査線」などを手が ける。99年、04年には、「踊る大捜査線 THE MOVIE」「踊る大捜査線 THE MOVIE2」で第18回、第23回藤本賞を受賞。10年7月から公開された第3弾「踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!」も大ヒットを記録した。
12月11日から公開された「ノルウェイの森」は、松山ケンイチ、菊池凛子、水原希子らが出演。世界50カ国・地域での放映が予定されており、高い期待が 寄せられている。


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