2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年2月13日

 この英フィナンシャル・タイムズ紙の社説は、交渉の第二段階を迎えるに当たり、同紙は英国のEU離脱を支持しなかったと断った上で、もう一度整理してフィナンシャル・タイムズ紙が最善と考えるEU離脱のあり方を書いたものです。EUのメンバーシップには劣るという不本意な状況ではあるが、最善を目指すべきで、それには英国が可能な限り欧州に近い所にいなければならないという当然の結論を書いています。しかし、そのための具体的措置として提示されていることは、いずれも実現しないと思います。

 (1)2年の移行期間を延長するオプションを残すことには、移行期間がずるずると続きBrexitが実現しないことになることを怖れる保守党の離脱強硬派が反対します。EU27も不確実な状態が長期化することに反対だと思われます。バルニエは、移行期間は2020年末までとしたいと発言していたように思われます。

 (2)メイ首相は、ノルウェー型は英国が単一市場のルール形成に発言権を持たないという基本的欠陥の故に選択肢たり得ないという立場であり、社説がいう「ノルウェー・マイナス」でもこの欠陥は変わりません。フィナンシャル・タイムズ紙が未練がましくこの種のオプションに言及することは不可解です。経済を守るためとはいえ、英国がそういう立場に甘んじるとは考えられません。

 (3)社説がいう次善の策は関税同盟にとどまることを含んでいますが、EUを離脱しながら独自の貿易政策を展開し得ないという選択は英国にとってあり得ないと思われます。

 最後に、上記社説は、最終的な交渉結果を見た時、有権者や議会は思い直すかも知れないと述べています。しかし、物事の順序として、まずは離脱に伴う3つの重要問題と移行取決めを含む離脱協定に合意し、議会の承認を得て、これを2019年3月の離脱までに確定することになります。EUとの将来の関係に関する交渉結果が判明するのは離脱後のことになるでしょうから、それを見て思い直して離脱を止めるわけには行きません。思い直すのなら、再加盟の申請をするしかありません。

 なお、英国は清算金の問題をなるべく有利な将来の関係を獲得するための梃に使いたい意向のようですが、清算金の問題は離脱協定に含まれます。従って、離脱協定が2019年3月までに確定した後は、何等かの工夫が可能なら別ですが、この梃は失われることとなるでしょう。

  
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