今月の旅指南

2011年1月7日

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辻 一子 (つじ・いちこ)

岡山県生まれ。フリーライター。旅行会社のPR誌の編集者を経て、1998年からフリーランスに。旅の雑誌を中心に活躍。

 薄暗い本堂に1001体の千手観音像がずらりと並び、荘厳な雰囲気を漂わせる京都・三十三間堂〔さんじゅうさんげんどう〕(国宝)。正式には蓮華王院〔れんげおういん〕といい、全長約120メートルの日本一長い木造建築として有名だ。

 そのお堂の西側に設けた会場で、毎年1月15日に近い日曜日(平成23年は1月16日)に開催されるのが、江戸時代の「通し矢」にちなむ「大的大会」。三十三間堂によると、

 「通し矢の歴史は定かでなく、古くは社寺などで正月の礼射として行われていたようです。それが弓術の競技となったのは天正年間(1573~92年)以降。三十三間堂はお堂が長いので力量を示すことができると評判を呼び、いつしか“弓道のメッカ”となったようです」

新成人が晴れ着姿で弓を射る「三十三間堂 大的大会」は京都の正月の風物詩になっている

 江戸時代の競技種目は、矢数を決めて的中率を競うものや、時間を決めて矢数を競うものなど、いくつかあったが、特に人気を博したのが「大矢数〔おおやかず〕」。夕刻に開始して翌日の同時刻まで、一昼夜で何本的〔まと〕を射通すかを競うもので、江戸時代初期から中期にかけて全盛を極めた。

 特に、尾州と紀州との競り合いは激しく、藩の後ろ盾のもとに多くの射手が挑戦し、記録更新が相次いだ。なかには、一昼夜に1万本以上を射て、8千数百本もの矢を通す豪傑がいたというからすごい。しかし、武芸を尊重する気風が薄れた江戸時代後期になると、通し矢の風習は次第に衰退していく。

 現在の「大的大会」は、新年の弓引き初めの儀式として伝わったもので、昔の半分の距離、60メートルで競射する。当日は、全国から集まった大学の弓道部員を中心とした男女およそ2000人が腕を競う。特に、新成人が振り袖袴姿で弓を射る姿は華やかそのものだ。

 「矢を放つ瞬間の緊張感や、矢が飛んでいくスピード感など、独特の雰囲気とともに、新春らしい華やかさを味わっていただきたいですね」

 この日は、後白河上皇の頭痛平癒にあやかる霊験あらたかな行事“柳のお加持〔かじ〕”も本堂内で行われるという。この機会に、日本一長い木造建築の本堂や仏像もぜひ拝観したいものだ。

 
 
 
 

三十三間堂 大的大会
〈開催日〉2011年1月16日
〈会場〉京都市東山区・三十三間堂(東海道新幹線京都駅からバス)
〈問〉075(561)0467
http://sanjusangendo.jp/

◆ 「ひととき」2011年1月号より

 

 

 

  

 
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