前向きに読み解く経済の裏側

2018年2月7日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

普通、バブルは自然に潰れる

 もっとも、バブルは、普通は自然に潰れます。企業収益が絶好調になるほど景気が良くなると、インフレ懸念が出てきて金利が上がり、バブルが維持できなくなるからです。ITバブルのような局所的なバブルは別ですが。

 平成バブルが巨大化したのは、当時はプラザ合意後の円高で輸入物価が値下がりしており、景気が絶好調なのにインフレにならない、という非常に珍しい状況だったからなのです。

 さて、今回の米国ですが、景気が拡大を続けているのに、インフレ懸念が生じていませんでした。これは、二重の意味でバブルが発生/拡大しやすい条件でした。第1は、「米国経済は素晴らしい。インフレなき景気拡大・経済成長が可能なら、今後も金融引き締めを経験することなく、景気拡大・経済成長が永遠に続くかもしれない」という「惚れ込み」を生む可能性があったことです。

 第2は、インフレにならなければ金融が緩和されたままなので、バブルの拡大を金融面から抑え込む力が働かないことです。

 そう考えると、すでにバブルであったのか否かは別として、バブルが発生して拡大する余地は十分にあったと言えるでしょう。

景気拡大がインフレをもたらし、金利を上げるという自動調節機能が作用

 今回の株価急落の発端は、雇用統計によって「米国の景気拡大がインフレをもたらしつつある」という認識を人々が持ったことでした。これは、2つの意味で米国の株価にマイナスに働きました。

 1つには、長期金利の上昇を通じて、「株より国債を持ちたい」という投資家を増やしたことでした。今ひとつは、「米国経済はインフレなき景気拡大・経済成長を謳歌できるわけではない」ということに人々が気づいた、ということです。

 まあ、理屈は以上ですが、実際には単月の雇用統計がわずかに動いただけですので、「臆病者の大群が水鳥の羽音に驚いて逃げ出した」といったイメージなのでしょうが(笑)。

 ここで重要なことは、今回の株価下落によって、発生していたかもしれないバブルの芽が摘まれた、ということです。これは、「長期的に見れば良かった」と言えると思います。今後は、実体経済の順調な景気拡大・経済成長を反映した、地に足のついた株価推移が期待されます。

 もっとも、それが株価の上昇になるのか否かは、何とも言えません。景気拡大の初期は増益率が高くなりがちですが、景気が成熟してくると増益率は低くなりがちです。一方で、金利は上昇してゆくでしょうから、「株式と国債のどちらが魅力的か」という比較に市場がどう回答するのか、今後の推移が注目されます。

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