定年バックパッカー海外放浪記

2018年2月11日

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高野凌 (たかの りょう)

定年バックパッカー

1953年生まれの62歳。横浜生まれ、神奈川県出身。大学卒業後は商社、メーカー勤務を経て2013年定年退職。2014年春から海外放浪生活を始める。放浪歴は地中海、韓国、インドシナ半島、インドネシア、サンチアゴ巡礼など。サラリーマン時代は主として海外業務に従事。ニューヨーク、テヘラン、北京にて海外駐在を経験。身長170センチ、57キロ。獅子座。A型。現在2人のご子息は独立し、夫人との2人暮らし。孫1人。

マレーシアの経済発展とイスラム教

 KLは堂々たる近代都市であると市内見物で実感。マレーシアはインドネシアと並んで人口に占めるイスラム教徒の割合が高く、宗教的にはイスラム国家の範疇に入る。

 奇しくもマレーシアはマハティール元首相、インドネシアはスハルト元大統領の下で、長期にわたるいわゆる開発独裁のプロセスを経て経済発展を遂げた。そしてイスラム教の戒律を維持しながら政教分離を徹底したことが両国に共通する政治原則であろう。

 強固な政権基盤の下で政治を長期にわたり安定させて、インフラを整備して外資導入による産業の高度化を進めた。トルコが国父ケマル・アタチュルクの大英断により政教分離し、政治の世俗主義を徹底し近代化したことを手本にしたのであろうか。

ショッピング・モール入口のクリスマス飾り。この前で大勢の買い物客が写メをしていた。キリスト教文化をミーハー的に受容するのは日中韓と同様

 他方でイスラム教が政治に密接に関与しているイラン、パキスタン、エジプトなどは、人口大国であり教育水準も高いにも関わらず軒並み経済的停滞が続いている。偏見かも知れないが、私にはどうもイスラムと経済発展は親和性がないように思える。

 途上国における経済成長の推進エンジンは先端技術を持った外資による直接投資であることは言をまたない。これは東南アジアの発展、中国の改革開放政策、BRICSの勃興など目覚ましい経済発展を遂げた国・地域に共通している。

地元のKK高校の生徒たち。英国植民地時代の布教活動の成果であろうか生徒の3分の1はキリスト教徒だった

 しかしイスラムの政治への影響力が強いと政治家は宗教勢力の動向に縛られてしまう。貧困はしばしばイスラム過激派の温床となり政治は混乱、外資は直接投資を忌避してしまう。政治家が庶民の不満解消のため“金持ち(資本家)から貧乏人(庶民)への所得移転”でバラマキ福祉を実施するとさらに資本逃避が進む。

 これでは国内産業が育つはずがない。イスラム革命後にこうした悪循環に陥ったのがイランである。イランでは革命後40年経過したが、海外からの直接投資は未だに少ないと聞く。

コタキナバルのショッピング・モールの寿司レストラン

一見すると日本と変わらないKKの寿司三昧店内。寿司職人のユニフォームも日本製とのこと

 コタキナバル(通称KK)はマレーシア領ボルネオ島の最大の都市である。KKの中心街最大のショッピング・モール“スリア・サバ”は、地上7階、地下2階の威容を誇る。正面玄関にはサンタクロースやトナカイなどクリスマス飾りがレイアウトされており、大勢の買い物客や観光客が記念写真を撮っている。

 寿司の看板が見えたので好奇心から覗いてみた。“寿司三昧・回転寿司”と漢字で書いてあったので、築地のマグロの初競りで最高額で落札している“すしざんまい”の経営かと店長に聞いたところ、「同じ質問をよく日本人観光客から受けますが、オーナーはマレーシア人です。マレーシア国内でチェーン展開しています。すし職人のチーフは日本で修行しています」とニコニコと教えてくれた。

 日本製寿司ロボットがシャリを握るので、地元寿司職人はネタを切って載せるだけなのだ。メニューを見ると、値段的には現地人でも少し無理すれば家族でランチを楽しめるというレベルだ。

寿司キングの店構え。入り口に精巧な寿司のミニチュアが飾られている

 店長によると漁港が隣なので毎日新鮮な魚介類を契約している漁師が持ってくるという。漁師達が漁港で小舟から伊勢海老、タコ、アワビ等を威勢よく水揚げしていたのでネタの新鮮さには納得した。

 ちょうど昼時の少し前だったが半分くらい席が埋まっていた。大半の客はマレーシアのイスラム教徒であった。なるほど寿司ならば豚肉やアルコールは使用しないのでイスラム教徒も安心できる。よく見るとショッピング・モールの中にはそれぞれが趣向を凝らした回転寿司レストランが全部で5軒もあった。

 日本人の寿司職人は一人もいなかったが、地元の買い物客や観光客で賑わっていた。回転寿司は湾岸諸国など海沿いのイスラム文化圏で、今後益々広がってゆくと確信した。

⇒第6回に続く

  
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