西山隆行が読み解くアメリカ社会

2018年2月9日

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2020年の選挙で再選目指すトランプの思惑

 トランプ大統領による一般教書演説の直後、2016年大統領選挙でトランプと共和党候補の座を争ったテッド・クルーズ上院議員は、連邦議会がこれほどまでの分裂状況になっているのを見たことはないと発言した。トランプは、一般国民の融和を目指すというよりは、党派対立の争点となっている問題を積極的に、耳目をひきつけるやり方で取り上げている。例えば、移民問題を取り上げる際に、メキシコのMS-13と呼ばれるギャングに殺された子供たちの親にスポットライトを当て、米墨国境問題を提起するなどしたのはその好例である。それに加えて、不法移民のせいでアメリカ国民の経済状況が悪化するとともに、アメリカのセイフティネットが危険にさらされていると言及するなど、自らの支持者に向けたメッセージが強く打ち出されている。

 トランプがこのような行動をとった背景には、自らの支持基盤を喜ばせさえすれば大統領選挙で勝利できるという認識を持っていることがあるように思われる。トランプ政権の支持率は、ギャラップ社の調査によれば、政権発足当初は45%程度だったが、今では38%程度になっている。これが歴代の政権と比べて低いことは否めない。ただし、あれほど問題発言を繰り返しているにもかかわらず30%台後半の支持を確保し続けているのは、その支持が底堅いことを意味している。トランプに投票した人の90%以上の人が今日でもトランプを支持する姿勢を示していることからも、これは理解できるだろう。

 トランプとしては、この強い支持基盤をベースとしつつ、民主党が人工妊娠中絶や同性婚を推進しようとするのに反発を示す保守的な人々の支持を加えれば、2020年の選挙でも再選を果たすことができると考えているのだろう。

 2016年大統領選挙の敗北を踏まえて民主党は、そのあるべき姿を模索している。その中で、トランプによる様々な問題発言を受けて、民主党リベラル派と呼ばれる左派的傾向の強い人々の発言力が党内で増大し、穏健派の影響力が低下している。この状況は一見民主党を活性化しているようにも見えるが、トランプにとっては思うつぼだといえるだろう。トランプに対する反発を背景として民主党系の活動家が活発な活動を展開すれば、強固な民主党支持者の間では盛り上がりを見せるが、大統領選挙自体には必ずしもプラスにならない状態が作り出されているということである。民主党がトランプの土俵に立たされておどっている状態となっているのである。

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