西山隆行が読み解くアメリカ社会

2018年2月9日

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西山隆行 (にしやま・たかゆき)

成蹊大学法学部教授

東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。甲南大学法学部教授を経て現職。専門は比較政治・アメリカ政治。著書に『アメリカ型福祉国家と都市政治』(東京大学出版会)、『移民大国アメリカ』(筑摩書房)、『アメリカ政治』(三修社)、『アメリカ政治入門』(東京大学出版会)、5月に『アメリカ政治講義』(筑摩書房)が刊行予定。

下院の選挙で勝利したい民主党だが……

 もっとも、トランプの姿勢は共和党にも大きな衝撃を与えている。共和党主流派からすれば、党がトランプによって食いつぶされているという印象があるだろう。例えば、党主流派からすれば、以後増大することが確実な中南米系などのマイノリティの支持獲得を長期的には狙いたいと考えているはずだが、その可能性はトランプによってつぶされてしまった。

 トランプのロシア関連疑惑が共和党に及ぼす影響も、思いの外大きいかもしれない。共和党は長らくアメリカのナショナリズムと、法と秩序の維持を強調し続けてきた。だが、トランプ陣営がロシアと通じた結果として選挙妨害がなされたり対ロ制裁緩和の密約が結ばれたりした可能性が指摘され、また、トランプ政権がFBIなどの法執行機関に対して捜査妨害をした可能性を指摘されるようになると、伝統的な共和党支持者は不満を抱くだろう。

 今年は連邦議会の中間選挙の年だが、多くの候補はトランプのようなカリスマ性を持つわけではない。また、中間選挙は大統領選挙の時と比べて大統領の所属政党は議席を減らす傾向があると指摘されている。これは、中間選挙の投票率が大統領選挙があるときと比べて低くなっているからであり、大統領選挙のついでに連邦議会選挙に行ってくれたような人が投票に行ってくれなくなる可能性があることなどが原因となっている。

 今年は、連邦議会上院は100名中34名が改選を迎える(正確には、33名が通常の改選を、1名が補欠選挙を迎える)。このうち、共和党議員は8名、民主党議員は23名(補欠選挙を加えると24名)、民主党系無所属が2名となっているため、民主党が上院で多数を獲得するのは容易でないと考えられる。

 他方、連邦議会下院は435議席全てが改選される。現在、共和党が239議席、民主党が193議席、欠員が3となっていて、二大政党の間に46議席の差が存在する。一般に、連邦下院議員が再選を目指す場合にはその再選率は90%を超えることを考えると、民主党が多数を獲得するのは困難だと考えられていた。しかし、今の時点で、共和党で引退する人や、上院議員や州知事を目指す人が30名(そのうち委員会で委員長を務める有力者は9名)存在することを考えると、民主党が多数を奪還する可能性も出てきている。しかし、ここにも民主党のジレンマを見て取ることができる。何故ならば、民主党が下院の選挙で勝利するためには左派の活動家を動員するのが効果的だが、この戦略は先に指摘したように、再選を目指すトランプ個人にとっては思うつぼになる可能性もあるからである。

 今年の11月の中間選挙に向けて、今後、予備選挙が徐々に行われていくようになる。二大政党が対立するだけでなく、ともに党内での分断がみられる状況で迎える今回の中間選挙の結果は、2020年の大統領選挙にも影響を及ぼす可能性が高い。今後のアメリカ政治の状況に注目する必要は高いといえるだろう。
 

  
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