前向きに読み解く経済の裏側

2018年2月12日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 もっとも、昨今の銀行は貸出先が乏しいため、自己資本比率規制は気になっていません。一方で、昨今の銀行はそれほど巨額の株式を保有しているわけではなく、株価の値下がりが貸し渋りを招くことはなさそうです。バブル崩壊後の株価暴落時には、銀行が巨額の「持ち合い株」を保有していましたし、株価の下落率も大きかったので、株安が銀行の貸し渋りの一因と言われましたが、今では銀行の置かれている状況が大きくことなっているのです。

今次株安は、むしろ米国景気の好調を反映した健全な調整

 今回の日本株の下落は、米国の株価下落を原因とするものです。米国の株価が下がると日本の経済ファンダメンタルズに何の変化も起きていないのに日本の株価が下がるのです。

 理由を説明するのは難しいですが、株の世界は「美人投票」と呼ばれるように、理屈ではなく人々がどう考えるかが重要なのです。そして、人々が「以前、米国の株価が下落した時には日本でも株価が下落した。今回もそうなるだろうから、売っておこう」と考えるため、米国の株安の翌日には日本が株安になるのです。

 では、米国株が下落したのはなぜかと言えば、米国の景気が拡大を続けてインフレの可能性が出てきたからです。景気が拡大を続けると、企業収益は増加しますが、長期金利も上昇するので、株価が上がるとは限りません。

 ところが今回は、景気が拡大しても長期金利が上がらなかったので、株価が上がりすぎていたわけです。加えて、企業収益と長期金利を考えても株価は多少割高であり、バブルの芽が発生していたとも言われています。

 これらが一気に調整されたために株価が急落したわけですが、株価の水準としては「上がりすぎが調整されて、概ね適正」といった水準にあります。

 今後も株価が更に大幅な下落を続ける可能性もありますが、仮に現在の水準で落ち着くとすれば、実体経済への打撃は少なく、むしろ景気が短期間で過熱するリスクが減少して景気拡大が長続きする可能性が高まったと考えるべきでしょう。

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