WEDGE REPORT

2018年2月14日

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花田吉隆 (はなだ・よしたか)

元・在東ティモール特命全権大使

在フランクフルト総領事、在東ティモール特命全権大使、防衛大学校教授などを歴任。

今後のドイツ政治を占う3つのポイント

 翻って、この4ヵ月半をどう考えるべきか。形の上では大連立という元の木阿弥に戻ることとなったが、しかし、この難航した交渉の過程でドイツ政治は大きく変貌した。

 第一に、混乱の発端は2015年の難民政策である。メルケル首相は明らかにボタンを掛け違えた。メルケル首相は国民がこれほどまでに反発するとは思っていなかったに違いない。今やヨーロッパ全土はポピュリズムの大きなうねりの中にある。ドイツはその例外かと思われたがそうではないことがはっきりした。新たに野党第一党として議会進出を果たした「ドイツのための選択肢」(AfD)を前に、既存政党は厳しい対応を迫られざるを得まい。難民問題は今後のドイツ政治の大きな焦点である。

 第二は、メルケル首相の指導力低下である。メルケル時代の終焉といってもいいかもしれない。選挙前は絶対的な強さを誇っていたメルケル首相は連立交渉の難航で指導力のもろさを露呈し、ある調査によれば、4年の任期を全うすることなく降板すべきだとする者が47%にも達した。政治ウオッチャーの間でも今後4年間は持たないだろうと見る向きが少なくなく、その場合、前倒し総選挙の可能性も排除されない。問題は、CDUに有力な後継者がいないことである。メルケル首相はこれまで有力と目されたライバルを次々と蹴落としてきた。その結果、メルケル首相を継ぐ後継者が党内に見当たらないのである。次がいないから任期を全うする、というのもドイツにとっては不幸なことであろう。

 第三は二大中道政党の弱体化である。今回の混乱を見ていると、二大政党の「断末魔のもがき」のような印象さえ受ける。もがいた結果、何とか大連立を組み、やっとのことで踏みとどまりはしたが、国民にはまた大連立かの感がぬぐえない。実際、直近の調査では国民の6割が大連立に否定的である。結局、大きな流れは「ドイツ政治の小党分裂化」である。しかし、二大政党が益々弱体化し小政党の分立という事態になれば、連立交渉はますます複雑化する。つまり、これまで無類の安定度を示してきたドイツ政治は、今後不安定度を増していかざるを得ない。後から振り返って、今回の混乱はそういう不安定化の始まりであった、と評されることになるのかもしれない。

  
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