変わる、キャリア教育

2018年2月20日

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福島創太 (ふくしま・そうた)

1988年生まれ。教育社会学者。早稲田大学法学部卒業後、株式会社リクルートに入社。転職サイト「リクナビNEXT」の企画開発等に携わる。退社後、東京大学大学院教育学研究科修士課程比較教育社会学コースに入学し、修了。現在は株式会社教育と探求社で、中高生向けのキャリア教育プログラムの開発に従事しつつ、同大学院博士課程に在学中。近著に『ゆとり世代はなぜ転職をくり返すのか―キャリア思考と自己責任の罠』

「生きた社会」を子どもたちに届ける

 もう一つ注目したいのが、「将来の在り方・生き方を主体的に考えられる若者を育むキャリア教育推進事業」のなかにある「「キャリア・パスポート(仮称)」普及・定着事業」である。平成29年度に厚労省とともにキャリア関連の予算を大いに盛り込んだ際に開始したこの「キャリア・パスポート(仮称)」は、「児童生徒が自らの学習活動等の学びのプロセスを記述し振り返る事ができるポートフォリオ的な教材」とされ、小学校から高等学校までの「学びの記録」とする、とされている。文部科学省HPにあがっている「キャリア・パスポート」の資料を見てみると特別活動を中核にして教育課程全体で行われるキャリア教育においては、活動内容や学びのプロセスを総合的に記述し、振り返ることができる教材が必要である、とされている。

 「キャリア・パスポート(仮称)」の使われ方をいろいろと想像すると良からぬ疑念も浮かんでくるが、「就職活動」といういまの日本の大学生における一大イベントに向けて、それまでの経験を可視化し、自分の興味の変遷や特性を自分自身で振り返り、志望企業や、面接において話すことを考えることができるようになり、リスクに配慮された運用がなされるのであれば、有効な部分は少なくないだろう。(これはキャリア教育の評価にもつながる部分であるが、それは連載のなかでじっくり取りあげたい)これも行政が示している1つの方針と言えるだろう。

 そして最も注目したいのが、民間企業や民間の団体との協働である。これは経済産業省の動きから、そうした意図が読み取れる。経産省の中に「教育サービス産業室」なる室ができ、民間教育サービスなどの活用による開かれた教育の実現を目指して「学びと社会の連携促進事業」をおこした(平成29年度補正予算案額25億円)。こうした動きの大きな目玉の1つは、EdTechと言われるIT技術を用いた新たな教育サービスの発展、普及、あるいはICTを用いた学校業務の効率化、改善である。

 しかし「学びと社会の連携促進事業」のなかには、民間教育サービスの教育現場への導入事例の創出や学びと社会の連携に必要なインフラ整備ロードマップの策定、民間教育サービス事業者と教育現場関係者のマッチングの実施なども盛り込まれている。また経産省が学校教育に関わっていく背景には、人生100年時代に、個人が社会で活躍・貢献し続けるために、社会全体で人材育成への投資を強化し、各個人が常にスキルや知識を身に付け、学び続けることが必要であるという考えがある。経産省の強みは中小企業を中心とした、全国の企業との強いネットワークである。そうしたリソースを学校内に持ち込み、生きた社会を会を子どもたちに届けることはキャリア教育の進化だけでなく、企業人の新たな人材育成に大きく寄与する可能性があるだろう(この点についても連載のなかで詳しく検討していきたい)。

 いかがだろうか。一口に「キャリア教育」と言っても、それが表す実態は多様である。また、読者のみなさんが持たれているイメージを大きく超える方針も見られたのではないだろうか。もちろん、これらは方針であり、どれだけ実践的な取り組みが本当に起こっているのかは読み取れないだろう。そこでこれからの連載を通して、キャリア教育の実際を明らかにするとともに、社会はそれにどのように関わっていくべきなのかを考えていきたい。

 まず第2弾では、3つ目の方針として掲げた学校と民間企業とのコラボレーションという視点からキャリア教育について考えてみたい。

*第2回(2月21日公開予定)へ続く
 

  
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