変わる、キャリア教育

2018年2月21日

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福島創太 (ふくしま・そうた)

1988年生まれ。教育社会学者。早稲田大学法学部卒業後、株式会社リクルートに入社。転職サイト「リクナビNEXT」の企画開発等に携わる。退社後、東京大学大学院教育学研究科修士課程比較教育社会学コースに入学し、修了。現在は株式会社教育と探求社で、中高生向けのキャリア教育プログラムの開発に従事しつつ、同大学院博士課程に在学中。近著に『ゆとり世代はなぜ転職をくり返すのか―キャリア思考と自己責任の罠』

 また学校で毎週行われるような正規の授業において、民間の会社が開発したプログラムが提供され、キャリア教育として用いられてもいる。例えば先ほども紹介した教育と探求社が開発、提供するクエストエデュケーションというキャリア教育プログラムは、現在全国約160校、2万人の生徒が正規の授業として受講している。ちなみに創業は2004年である。一日でイベント的に行われるような企業からの出張授業とは異なり、複数コマで提供されるこのプログラムは、学校で行われる毎週の授業で実施される。プログラムの中で、実際に企業が抱える課題や社会課題に取り組み、社会を学び、社会で生きる自分を育んでいく。課題を見つけ主体的に取り組み、仲間とともに解決策を創造していくという体験を通して、働きだしてから必ず必要となる資質や能力の育成が実現できるだろう。

 さらに、企業の経営陣が実際に抱えるような課題に取り組んだり、自ら困っている人を見つけ、その背後にある社会課題を見つけ、その解決策を考えるようなプログラムは、実際に未来の社会をつくりあげていく経験となる。今年はこの活動に、NTTドコモ、クレディセゾン、大和ハウス工業、テレビ東京、パナソニック、富士通といった企業が協賛し、学びの題材となるテーマ(課題)を提供している。企業にとっては奇抜で本質的な課題解決の企画を中高生から提案されたり、企業のことを若い世代に深く知ってもらったりする絶好の機会ともなる。2月24日には、このクエストエデュケーションに取り組んだ中高生が全国から集まり自分たちの取り組みを発表し合うクエストカップが立教大学で開催されるが(http://www.questcup.jp/2018/)、もし時間があれば年齢問わずぜひ足を運んでみて欲しい。中高生が持つ圧倒的な可能性に驚かれるだろう。冒頭で紹介した企画はどれも、このクエストカップでの中高生たちの発表である。こうした民間企業と学校との協働を促進していくことで、さらにキャリア教育が実現できることは増えていくだろう。

 「キャリア教育の推進に関する総合的調査研 究協力者会議報告書(2004)」で文部科学省は、キャリアとは「個々人が生涯にわたって遂行する様々な立場や役割の連鎖及びその過程における自己と働くこととの関係づけや価値づけの累積」としている。必ずしも仕事や働くことに限定されたものではないことがわかる。人一人の人生の中で担う役割や彼らが創出していく価値の最大化がキャリア教育において重要なポイントだとしたら、企業とともに協働することで学びの効果がさらに大きくなっていく可能性は大きいだろう。それはもはやキャリア教育の枠を超えて教育における普遍的な価値創造にも繋がる。この取り組みには当然財源の問題がでてくるが、そこに国の予算が伴っていくことの意義は大きい。

キャリア教育の現状に関する「4つの課題」

 こうした取り組みを進めようとする文部科学省は現在、キャリア教育に対して下記のような課題を感じているようである。

「職場体験活動のみをもってキャリア教育を行ったものとしているのではないか」
「社会への接続を考慮せず、次の学校段階への進学のみを見据えた指導を行っているのではないか」
「職業を通じて未来の社会を作り上げていくという視点に乏しく、特定の既存組織のこれまでの在り方を前提に指導が行われているのではないか」
「将来の夢を描くことばかりに力点が置かれ、「働くこと」の現実や必要な資質・能力の育成につなげていく指導が軽視されていたりするのではないか」

 上述の「キャリア・パスポート」という資料で挙げられている、キャリア教育に関する現状の課題である。

 この4つは、連載第1回の記事の冒頭で取り上げた人事担当者のキャリア教育に対する課題や不満と通じる部分がある。そして読者のみなさんにも「意外とわかっているじゃないか」という思いをもつ方が少なくないのではないだろうか。また、こうした課題を見ると民間企業との協働を推進している理由もよくわかる。問題はこうした課題感がどのように施策に反映され、そして効果を生んでいくかだ。政策をつくり、予算を配分するところまでは行政の役割かも知れないがそれを実装したり、チェックしたり、成果へとつなげていく段階での社会の影響力は決して小さくない。

 いまの中高生、小学生ももちろん、ゆくゆくは社会に出てくる。将来あなたの部下になったり、取引相手となるかもしれない。そのときに問題に気付いてももしかしたら遅いかもしれない。お子さんを持たれる方はさらに喫緊の問題となるだろう。社会全体で、次世代の育成にはもっと注意を向けていくべきである。そしてキャリア教育はそのために最もとっかかりやすいテーマなのではないだろうか。

 次回は、社会がどのようにキャリア教育に関わっていくべきなのか、ということについて考えていきたい。

*第3回(3月下旬公開予定)へ続く
 

  
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