韓国の「読み方」

2018年2月22日

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、元ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

想定外だった若者の反発

 平昌冬季五輪への北朝鮮の参加では、アイスホッケー女子の南北合同チームへの反発が強かった。五輪へ向けて苦しい練習を続けてきた韓国代表選手の出場機会が減らされることへの同情世論は強かったし、格差拡大と就職難にあえぐ若者たちが自分たちの境遇と重ね合わせて反発した。

 さらに大きかったのは、時代の違いだ。南北合同チームが初めて実現した卓球の世界選手権(1991年)とは、韓国社会の雰囲気も違うし、韓国人が北朝鮮に向ける視線も様変わりしている。

 南北対話を担当する韓国統一省の50代職員は苦笑しながら、こう語った。

 「90年代初めの韓国は民主化したといっても、まだまだ軍事政権時代の社会意識が残っていた。政府が『合同チームを作る』と言えば、選手も、国民も無条件で従った。統一を願う気持ちが強かったということもある。文政権の中枢にいるのは当時の熱気の中で青春時代を過ごした世代だから、南北合同チームに反発が出るなんて予想もしてなかったのだろう。実は、私も驚いたんだ」

 同世代の他の韓国人から同じような感想を聞くことは多かった。

 合同チームへの批判を意識してアイスホッケー代表チームの激励に足を運んだ文氏の言葉は、やはり若い世代との意識のずれを感じさせた。文氏は選手たちを前にして「(合同チームを作ることで)戦力が大きく向上するとは思わない。むしろ息を合わせる努力がさらに必要になるかもしれない。(それでも)南北が一つのチームで臨めば歴史の名場面になる」と述べたのである。文氏としては、当然の感覚を語っただけだったのだろう。

大統領支持率は一時10ポイント下落

 では世論調査はどうだったろうか。2つの調査を見てみたい。一つ目は韓国リサーチ社が1月9〜10日に実施したもの。南北協議で北朝鮮の参加や代表団派遣は合意されたものの、開会式での合同入場とアイスホッケーの合同チームについては決まっていない状況だった。ただ、北朝鮮の参加となれば合同入場は真っ先に連想されるし、文大統領は以前から合同チーム結成への意欲を表明していた。

 この調査では、北朝鮮の参加には81.2%が賛成だったが、開会式の合同入場は「なるべく行うべき」50.1%、「無理する必要はない」49.4%と意見が割れた。保守派から「自国開催の五輪なのに国旗を掲げて入場しないのか」という批判が出た影響だろう。合同チームでの参加には「なるべく行うべき」27%、「無理する必要はない」72.2%と否定的な意見が圧倒的だった。

 この時期から2月上旬の五輪開幕前まで、大統領支持率は急落した。多くの調査で7割程度を維持していたのが、6割程度になったのだ。支持・不支持の理由を聞く韓国ギャラップ社の調査では、不支持の人の25%が「合同入場・合同チーム」と答えたという(複数回答)。支持率はその後持ち直しているし、急落したといっても6割というのは十分に高い数字だが、世論に支えられているという意識の強い文政権にはショックだったろう。

 もう一つの調査は韓国ギャラップ社が1月30日〜2月1日に行ったものだ。合同入場は「よかった」53%、「よくなかった」39%、アイスホッケー女子の合同チームは「よかった」40%、「よくなかった」50%だった。逆風は弱くなったものの、それでも合同チームの評判は悪かった。

 どちらの調査でも、合同チームには若年層が強く反発した。19〜29歳は、韓国リサーチ社調査では82%、韓国ギャラップ社調査でも62%が合同チームに否定的だった。

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