書籍詳細

遺伝子情報は人類に何を問うか
柳川弘志 著

目次


ここ数年、「ゲノム」という言葉をしきりに耳にするようになった。ヒトの体を構成する細胞の一つひとつには、体を間違いなくつくりあげ、刻々に変化する外界に対処しながら生活を営み、子孫をつくり、やがて死に至る、いっさいの遺伝情報が担われている。これをゲノムと呼ぶのである。

ヒトのゲノムの全塩基を解析する「ヒトゲノム解析計画」は、アメリカの国立ゲノム研究所を中心に日本や欧州諸国の連携により1990年から15年間計画で進められてきた。生命の設計図であるゲノムが解読できれば、ヒトの体で起こっている基本的なプロセスはすべて理解できる。ガン、循環器系疾患、精神神経の問題、発達障害をはじめ、あらゆる病気の研究は飛躍的に進歩する。病気の診断、治療、薬づくりなどに画期的な変化をもたらすはずである。

どんな病気にかかりやすいか、予測を可能にし、個人に即した予防対策にも道が開かれる。しかし、人間について知りすぎることは両刃の刃という側面もある。遺伝子の中身という究極のプライバシーをどう守るか、社会の体制づくりもこれからである。

ゲノムの解析は、生物科学ばかりでなく、情報科学、物理・化学、各種の工学などの多くの学問分野をまき込み、医学・薬学などの応用分野も様変わりする可能性を秘めている。大げさな話ではない。21世紀最大の化学の流れのキーワードが「ゲノム」であり、「ヒトゲノム」なのだ。今後の「ゲノムサイエンス」の展開に大いに期待したい。(本文より)

<書籍データ>
◇B6判並製、236頁
◇定価:本体1,200円+税
◇1999年11月9日発行

<著者プロフィール>
柳川弘志
(やながわ・ひろし)
三菱化学生命科学研究所BILD研究センターゲノム機能工学グループ室長。1969年横浜国立大学工学部卒業。1974年東北大学大学院理学研究科博士課程修了。理学博士。1980年より82年まで、米国レンスアー工科大学客員助教授を務める。専門はタンパク質の進化分子工学、ゲノム機能工学。著書に『生命の起源を探る』(岩波新書)、『RNA学のすすめ』(講談社ブルーバックス)、『生命はRNAから始まった』(岩波科学ライブラリー)、『生命はいかに創られたか』(TBSブリタニカ)、『RNAのニューエイジ』(羊土社)、共著に岩波講座『地球惑星科学1』、『生命の地球』(三友社出版)などがある。

遺伝子情報は人類に何を問うか

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