WEDGE REPORT

2018年3月13日

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荻野みどり (おぎの・みどり)

株式会社ブラウンシュガーファースト 代表取締役社長

福岡県出身。2011年第一子を出産。娘が4カ月のときにお菓子ブランド“BROWN SUGAR 1ST.”を立ち上げた。地元福岡の障がい者福祉施設やママたちにお菓子を作ってもらい、東京・青山の国連大学前のファーマーズマーケットで販売をスタート。製造・販売する中で、原材料としての油脂選びの大切さに気づき、バターやマーガリン、ショートニングに代わる油としてココナッツオイルに出合い、2013年に株式会社として法人登記し、輸入・卸をスタート。ココナッツオイルブームの火付け役とも言われている。

消費者が知らない食品ロスの実態

 そもそもなぜ大量の食料廃棄が発生しているのでしょうか。それは「3分の1ルール」をはじめとする業界の厳格な商慣習に一因があります。「3分の1ルール」とは、賞味期限の3分の1を経過した時点で、商品を小売店に納品しないという暗黙の決まりのことです。仮に賞味期限が9カ月ある商品の場合、製造から3カ月を過ぎると小売店に卸せなくなります。また、製造から3分の2を経過した商品は、小売店の店頭からその大部分が撤去され廃棄に回されます。

 

 では、問屋や小売店が悪いのかというと、私はそうではないと考えています。食品メーカー、問屋、小売店、それぞれが皆すこしでもクレームになるリスクを排除しようと日々努めています。こうしたルールは、私たち消費者が当たり前のように求める「安定供給・安定品質」を維持するためのインフラでもあるのです。

 働く母親である消費者としての視点、食品会社の経営者としての視点、両方を持ち合わせているのが私の強みだと思っています。そんな立場から見ると、「いつでも、気軽に、近所で、欲しい食品を買える」という状態が食品会社の努力のうえに、同時に多くの食料廃棄のうえに成り立っていることを痛感しています。棄てたい人なんて、じつは誰もいない。この恵まれたサプライチェーンに感謝しつつ、そこからどうしてもふるい落ちてしまう食べ物にどうにか再付加価値づけをして再流通させることはできないかと考えました。

食品ロス解決への取り組み

 まずは現状を把握するため、同業他社にヒアリングしてまわりました。しかし、なかなか廃棄の実態を教えてもらう事ができません。食品を大量に廃棄していることが世間に知られると企業イメージが悪くなり、批判される可能性が出てきます。企業にとっては廃棄していることを認める発言自体がリスクであり、業界におけるタブーになっているのだと感じました。

 そこで当社が大量に廃棄せざるを得ない現状と、考えている解決策を具体的に伝えるようにしたところ、「じつはウチも……」とすこしずつ実態を教えてもらえるようになりました。「自信をもって扱っている商品を棄てなければならず、精神的にも金銭的にもつらい」、「賞味期限内の商品であればせめて原価くらいは回収したいが、新たな商流を見つけるにはコストもかかるため着手できない」といった声が聞かれました。

 そういった声を受けて、「#食べ物を棄てない日本計画」ではいま、具体的に以下のような取り組みを進めています。

シェアオフィス“ポータルポイント”に設置された「ヘルシースナッキング」コーナー。写真左はシェアオフィスの運営会社・リアルゲイトの岩本裕社長

 1つ目は、シェアオフィスとの提携です。株式会社リアルゲイトが運営するシェアオフィス“ポータルポイント”に「ヘルシースナッキング」コーナーを設置してもらいました。3分の1ルールで落ちてしまったものや、パッケージの印字不良などで流通させられないヘルシーなおやつを、シェアオフィスの利用者向けに販売しています。ただ、「フードロスを減らせる」という社会的意義を訴えても購入につながりにくいため、あくまで「ヘルシーでちょっとお得」といった付加価値でアピールしています。この取り組みは福利厚生の一環として、すでに具体的に導入を検討していただいている企業様が複数社あります。

 2つ目は、小売店との提携です。当社の取引先であるオーガニックスーパーからしなびてしまった生鮮青果を引き取り、自社店舗でマフィンに加工してスーパーに再納品しています。

しなびてしまった野菜や果物をマフィンに加工

 3つ目は、レストランとの提携です。株式会社HUGE(ヒュージ)は、不安定供給となってしまう点を理解したうえで、サプライチェーンから落ちた食品を活用するメニューを考案してくれました。美味しいオーガニック食材がすこしお得に手に入ることに関心を持っていただき、カクテルの原料や料理のソースなどに活用されています。

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