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2018年3月21日

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ミャンマーの少数派イスラム教徒ロヒンギャの人々が暴力を逃れて隣国バングラデシュに避難している問題で、難民キャンプで生活する10代前半の少女たちが売春目的で人身売買されていることが、BBCの取材で明らかになった。

外国人が少女たちを買春するのは容易で、少女たちが新たな危険にさらされる結果になっている。

アンワラさん(仮名)は14歳。ミャンマーで家族を殺害され、バングラデシュに避難するなかで助けを求めた。

「ワゴン車に乗った女の人がやってきて、一緒に来ないかと言われたんです」

アンワラさんが同意すると、ワゴン車に押し込まれ、新しい生活を得る道のりは安全だと保証された。しかし、彼女が連れて行かれたのは最寄りの町、コックス・バザーだった。

「それからしばらくして2人の男の子が連れてこられた。私が言うことを聞かないので、ナイフを突きつけられ、おなかを殴られた。それから男の子たちに強姦された。セックスを拒否しているのに、2人はやめなかった」

近くにある難民キャンプでは、人身売買の話は日常茶飯事だ。被害者は主に女性や子供たちで、キャンプから誘い出され、労働や性労働を強いられる。

何度も耳にした人身売買の話の背後にある取引の仕組みを調べるため、BBC取材班は、子供への搾取と闘う法執行組織の育成を助けるため創設されたセンティネル財団と共に、バングラデシュに向かった。

子供や親たちは、バングラデシュの首都ダッカや海外でメイドとして、あるいはホテルやレストランのスタッフとしての仕事があると言われたと話す。

混乱した難民キャンプの状況は、子供たちが性産業に引き込まれる危険を大幅に高めている。より良い生活があると、追い詰められた人々を誘うのが人身売買業者の残酷な手法だ。

地元の慈善団体に助けられた14歳のマスダさん(仮名)は、自分が人身売買に遭った経緯をこう語った。

「自分に何が起きるのか分かっていました。仕事があるよと言った女の人が人々にセックスさせているのはみんな知っていた。ここにずっと前から住んでいるロヒンギャの人で、私たちも知っていた。だけど、仕方がなかった。ここでは何も手に入らない」

「私の家族はいなくなってしまって、お金がなかった。ミャンマーで強姦された。昔は森の中できょうだいと遊んでいたけど、どうやって遊んでいたのかは、今は忘れてしまった」

子供たちともう会えないのではないかと泣く親たちもいた。一方で、愛する子供たちからの連絡がなくても、より良い生活が得られているという期待に笑顔を見せる親もいた。

ある母親は、キャンプの中の生活よりは「どこだってもっと良い」と話した。

しかし、子供たちはどこに連れて行かれたのか、誰が連れて行ったのか。

BBC取材班は、セックスをしたいと望むバングラデシュに着いたばかりの外国人を装い、子供たちへの接触を試みた。

性産業にかかわっていることで知られている小さなホテルや海岸のコテージの所有者たちに尋ねてから、わずか48時間以内に、複数の売春あっせん業者の電話番号が入手できた。

警察の了解を得ていた取材班は業者たちに、外国人にサービスを提供できる低年齢の女の子、特にロヒンギャの子はいないのか尋ねた。

ある男は、「若い子はいますよ、たくさん。でもなんでロヒンギャがいいんですか。一番汚いですよ」と語った。

取材班は今回、同様の状況を何度も経験した。コックス・バザーにおける売春の階層では、ロヒンギャの少女たちは最も顧客に望まれず、安い対価を支払われていた。

人身売買を行うネットワークに関係するさまざまな業者と接触したが、交渉の際には、新たな人身売買を誘発しないために、すぐに少女に会いたいと強調した。

さまざまな少女の写真が届けられるようになり、年齢は13~17歳だと告げられた。ネットワークの巨大さと少女たちの数は驚くべきものだった。もし我々が写真を見た後、別の少女を求めても、選択肢はまだ数多くあった。

少女たちの多くはあっせん業者の家族と一緒に生活している。顧客を取っていないときは料理や掃除をしていることが多い。

関係者の一人はこう語った。「少女たちが長くいることはない。顧客はだいたいバングラデシュの男たちで、しばらくすると飽きる。若い女の子の方がめんどうを起こすので、追い出す」

調査と記録作成を経て、地元警察に証拠を提出した。警察はおとり捜査を担当する小規模のチームを作った。

警察はすぐにあっせん業者が誰か分かった様子で、警察官の一人は、「彼を知っていますよ。我々は良く知っている」と語った。情報提供者なのか犯罪者として知られているのか、警察官が言ったことの意味は分からなかった。

おとり捜査が準備されるなか、取材班は業者に電話をかけ、写真で見た2人の少女を午後8時にコックス・バザーにある大きなホテルに連れて来るよう求めた。

センティネル財団のメンバーが顧客を装い、通訳と一緒にホテルの前で待った。ホテルの駐車場には覆面捜査官たちが待機した。

午後8時に近づくと、業者と顧客のふりをする財団メンバーとの間で、頻繁な電話のやり取りがあった。業者はホテルから離れた場所で会うのを要求したが、我々は拒否した。そうすると業者は、写真で見た2人の少女たちを車に乗せた運転手を送ってよこした。

代金の授受が終わり、財団メンバーが「もし今夜良ければ、もっと頼めるだろうか」と尋ねると、運転手は黙ってうなずいた。

運転手がお金を受け取ったのを確認した警察が踏み込み、運転手を逮捕。少女たちの保護には児童保護や人身売買の専門家たちが手助けした。

少女たちの一人は保護施設に行くのを拒否したが、15歳だと語ったもう一人の少女は同意した。

少女たちは貧困と売春との間で選択を迷っているようだった。性労働をしなくては自分や家族を養えないと、少女たちは話した。

国内あるいは国境を超えて女性や子供の人身売買を行うのには一定の組織化が必要になる。複数の犯罪組織が連絡を取り合い、また顧客を見つけるために、インターネットが利用されている。

バングラデシュのダッカやチッタゴン、ネパールのカトマンズ、インドのコルカタにロヒンギャの子供たちが人身売買で連れていかれる事例がみられた。

コルカタでは性産業が急成長するなか、少女たちはインドの身分証を与えられ、それまでの人格を失いシステムに吸収されていく。

バングラデシュ警察のサイバー犯罪担当部署で取材班は、業者たちが少女たちを売春させるためネット上で取引する実態について説明を受けた。フェイスブックの公開あるいは非公開のグループが、公になっていない児童性産業への入り口となっている。

暗号化されたウェブサイトの迷宮の中、ダークウェブで児童性愛者たちが情報交換する場所がある。世界中で子供たちとセックスをする方法を共有するのが目的だ。

頻繁に情報発信する、あるユーザーは、特に難民危機に瀕するロヒンギャの子供たちを利用する方法を、詳しく説明している。当局に察知されるのを防ぐ方法、地元警察の実情、また子供たちを最も餌食にしやすい場所などだ。

別のユーザーはこれに対し、「これ(難民危機)が今起きているうちに、休暇を取りたい気分だ。アイデアや地元情報があったら、なんでも教えてほしい」と書き込んでいる。

スレッドはその後、当局によって削除されているが、児童性愛者や人身売買業者が最も弱い立場の人々を餌食にする機会を、難民危機がいかに提供しているのか、背筋が凍るような実態を物語っている。

バングラデシュでは今も、人身売買業者や売春あっせん業者、取次ぎや搬送担当者がネット上やオフラインのネットワークを使い、女性や子供を性産業に送り込んでいる。

ロヒンギャ危機がバングラデシュの性産業を生み出したわけではないが、より多くの女性や子供たちが提供されることにつながり、買春の対価を下げ需要をこれまでになく強める効果を生み出している。

(編集部注――記事中の名前は身元を保護するため仮名を使用しています)

(英語記事 The Rohingya children trafficked for sex

提供元:http://www.bbc.com/japanese/43481534

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