2024年4月23日(火)

ネット炎上のかけらを拾いに

2018年3月24日

 たとえば、地下アイドルがファンに対してライブでのマナーを求めるようなツイートを呈する。すると、「炎上覚悟でこんなことを言えるのはさすがだな」というつぶやきが散見される。客観的に見てアイドルに非があるとは思えないが、アイドルに対して感情的なリプライを送るアカウントは確かに存在する。

 発言者に明らかな非がある場合や、もしくは賛否両論が交わされている場合を「炎上」だと思っている筆者の感覚の方が古いのかもしれない。「炎上」という言葉は、一部では「発言者に非があるか否かは問題ではなく、攻撃的なリプライが複数寄せられる状態」の意味で使われている。

 これは恐らく、若年層が目の当たりにしてきた「大人たちの炎上」がそのように見えたからなのだろう。ファンにライブマナーを求める地下アイドルの何が悪いのか筆者にわからないのと同じように、少なくない割合の10代は、たとえば政治家が「保育所の拡充を求める母親は独善的だ」とツイートすることの何が炎上ポイントなのかわからないのではないか。大人と子どもの違いだけではなく、自分の興味・関心の薄いトピックについて、人が他人の怒りを理解するのは基本的に難しいことなのだろう。

 ここまで書いて気が付いたが、そういえば「大人」の中でも、芸能人がつくった子どもの弁当が肉ばかりに見えるとか、一億総姑かと感じるような炎上も確かにある。炎上とはいじめである、そう10代が理解するのもおかしくない。

「炎上狙い」は難しい

 「炎上覚悟で」というツイートを追うと、しばしば自分の顔写真をアップしている10代がいることがわかる。恐らく、顔写真をアップするのは「自分の外見に自信がある行為」と見なされている。だから「ブサイクのくせに顔を載せるな」という理由で「炎上」したケースが過去に複数あったのだろう。

 顔写真をアップしながら「炎上覚悟で」とツイートするのにはこんな背景がある。しかしそのツイートの多くは、それほど拡散も炎上もしない。せいぜい2桁程度のRTではあるが、コミュニティが狭い中では、それでも「多くの人に見られた」状態なのかもしれない。

 「炎上覚悟で」と前置きしながら、ちょっとした意見をツイートしている場合もある。本人は「こんな毒舌を言っていいのか」とドキドキしながらのツイートなのかもしれないが、これも多くの場合、炎上していない。

 炎上するツイートは、反論を買うことを予想していない無邪気さ、無神経さが鼻につくからこそ炎上するのだろうし、ツイッターのユーザーたちは、「炎上」で人目を引き、あわよくばフォロワーを増やそうとするユーザーの多さにもうんざりしているのだろう。

 案外、狙って炎上することはなかなかできない。何を言っても人をイラッとさせてしまう炎上芸人のような有名人も存在するが、そうでない人が炎上を狙うのは、拡散を狙うのと同じぐらい難しいことなのだろう。
 

  
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