ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2011年2月17日

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クリス・ネルソン (Christpher Nelson)

政治ジャーナリスト

アメリカのシンクタンク「サミュエル・インターナショナル・アソシエイツ」所属。特に日本、中国・台湾、朝鮮半島問題に焦点を当てたアジア外交政策のコンサルタント。1970年より下院外交委アジア小委員会のスタッフや上院民主党政策委員会のアジア政策顧問などを歴任した経験により、議会のみならず米政権の内情に詳しい。現在は、外交政策や通商問題のインサイダー情報誌「The Nelson Report」発行。

 ワシントンからお送りするこのコラム。今月号のために筆を執った日、昨年下院で首尾よく可決された人民元のミスアラインメントに関する対中制裁法案(通貨法案)の主たる提出者たちが、今年は同じ法案が超党派の支持を得て下院に再提出されるだけでなく、上院でも提出されると発表した。

人民元過小評価で
再提出された対中制裁法案

 何年にもわたる強硬な発言などなかったかのよう。上院の通貨問題の“闘士”たちはどういうわけか、言行一致はもとより、エゴを抑えることすらできなかったようだ。だが、2010年末にかけては、威勢のいいチャック・シューマー上院議員(ニューヨーク州、民主党)が時折、議会休会の期日が迫る「絶対譲れない」法案に下院の通貨法案をぶつけると脅してみせていた。

 仮にシューマー議員が本当にそうしていたら、大統領は切に必要とされる法案を土壇場で失うか、それとも戦略上慎重に扱うべき広範な米中関係の理性的なマネジメント継続を危険にさらすか、という選択を迫られていたはずだ。

 だが上院では、シューマー議員を含むすべての議員は通貨について語るばかりで、行動には一切出なかった。これは昨年の話だ。

 では、今年はどうか。米財務省は、中国が紛れもなく為替相場を操作していることを言明しつつも、米国通商法の下では中国を為替操作国として「認定」する根拠がないと述べた。そんな2度目の“KABUKIショー”が終わったばかりなのだ(注)。にもかかわらず、共和党が下院の過半数を押さえ、デビッド・キャンプ議員(ミシガン州、共和党)が下院歳入委員会の委員長に就任した今、政治の力学が変わったことは明らかだ。

 キャンプ議員は昨年、当時下院歳入委員長だったサンディー・レビン議員(ミシガン州、民主党。中国の対米為替政策が貿易赤字を引き起こしたとして、WTOに提訴すべきと主張していた)の修正通貨法案への支持を表明して賛成票を投じ、筆者を含む多くの人を驚かせた。彼は元々、法案の反対を表明していたからだ。だが、法案を可決した委員会配布資料のインクが乾きらないうちに、我々はキャンプ議員のスタッフから連絡を受けた。

 「クリス、昨夜のスピーチを見たでしょう? 彼は新委員長に就く来年(つまり今年)は、中国の通貨が『主要な優先事項』にならないと言ったんですよ」という内容だ。言いたいことは分かった。

コトの本質は
通貨そのものではなく・・・

 中国の通貨は今や切実な問題だとはいえ、我々は本稿すべてをこの問題に割くつもりはない。ただし、各種調査が一貫して、既に中国に進出している米国企業の大半が通貨のミスアラインメント問題を懸念事項のリストのかなり下の方に挙げることを理解しておくことは重要だ。実際、市場へのアクセス、知的財産権、政府調達、法の支配といった問題に関する不満の方がずっと多いのだ。

(注)米財務省は年2回議会に提出する「国際経済・為替政策報告書」で「昨年6月から人民元相場は弾力性を回復、人民元の対ドルレート上昇は加速している。また訪米した胡錦濤国家主席が、内需拡大への努力を強化して、相場の弾力性もさらに高めることを約束した。このため中国は為替操作国の定義に当てはまらないと判断した」としている。

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