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2018年3月30日

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ジョナサン・エイモスBBC科学記者

制御不能に陥っている中国の宇宙実験施設「天宮1号」がこの週末、地球に落下する。

全長10メートル超、重さ8トン超のこの施設は、大気圏に再突入する人工物としては大き目のものだ。

全ての通信が途絶えているため、落下も制御できない状態だが、専門家は燃え残った部分が人口密集地に墜落する可能性は極めて低いとしている。

英宇宙局の主任エンジニア、リチャード・クロウザー氏は、「これまでに制御不能の状態で地球に落下した物体と比べ、天宮1号は体積も大きく、圧力がかかって強固になっている。そのため、多数のレーダーが今回の落下を追跡することになる」と話す。

「部品の大部分は、再突入の熱で燃え尽きると考えられており、残りの破片も海に落下する可能性が非常に高い」

2011年に打ち上げられた天宮1号には、6人の中国人宇宙飛行士が訪れた。本来は推進装置で無人の南極海上空へと軌道を修正した後、再突入させる計画だった。

しかし、2016年にいきなり制御不能となったため、落下の経路を修正できなくなった。

欧州宇宙機関を中心とする13の宇宙機関から成る国際機関間スペースデブリ調整委員会(IADC)が現在、天宮1号の軌道を監視している。想定される落下経路モデルを作り、再突入の時間と場所を予測しようとしている。

多くの不確定要素が関係するため、確定情報は天宮1号の寿命が尽きる直前まで発表されない見通し。

ESAスペースデブリ局のホルガー・クラーク局長は、「1時間分の確定情報が出るのはおよそ4時間前になる。そして、この1時間は(天宮1号の)地球1周分を意味する」と説明する。

「それでも、多くの国々や大陸を除外するには十分だ」

天宮1号は北緯43度と南緯43度より高緯度には落下しない。北緯43度と南緯43度の間には、例えば地中海からタスマニアの間の地域が含まれる。

落下があり得ない地域は、天宮1号の打ち上げ角度によって決まっている。中国政府が追跡できる地球上の範囲は限られているため、周回軌道を赤道面に対して比較的低緯度に限定する必要があった。

これに対して、国際宇宙ステーションは、赤道面に対して51.6度の角度で地球を周回している。

再突入の可能性がある地域には52億人が暮らしているものの、ほとんどは海で、天宮1号の燃え残りも海上に落下する可能性が非常に高いとされている。

クラーク博士は「似たような事例から、再突入による燃焼で残るのは全体の20~40%だと分かっている」と説明。

「宇宙船に搭載されている物体の耐熱性は大体同じなので、この法則は天宮1号にも当てはまるだろう」。

「つまり、(天宮1号8トンのうち)1.5~3.5トンが燃え残ると考えられる」。

部品の中でも、大気圏突入を生き延びることがもっとも多いのはタンクだ。宇宙船の内部に搭載されているため、落下中にも保護されているからだ。

他にも鉄やチタン、炭素繊維強化プラスチックなどで作られた部品も耐熱性が高い。

天宮1号は大気圏に再突入する制御不能な物体としては大きなものだが、最大ではない。

1979年に制御不能に陥った米航空宇宙局(NASA)の「スカイラボ」は80トンだった。燃え残りは豪・西オーストラリア州に落下したが、けが人はいなかった。

2003年2月の大気圏再突入時に空中分解したNASAのスペースシャトル「コロンビア号」も体積は100トンだった。この時も破片が米テキサス州とルイジアナ州に降り注いだが、負傷者は出ていない。

ハーバード・スミソニアン天体物理学センターのジョナサン・マクダウェル氏はツイッターで、コントロール不能な状態で大気圏に再突入する物体としては、天宮1号は50番目の大きさだと書いている。

https://twitter.com/planet4589/status/977782353052434433

中国国家航天局はIADCの天宮1号監視に参加し、保有するデータを共有している。

中国はすでに、2つ目の宇宙実験施設「天宮2号」を打ち上げている。こちらは稼働中で、燃料補給を昨年受けたばかりだ。

中国はより永続的な宇宙ステーションの設置を計画しており、その予行演習として、ランデブー(同一軌道での接近操作)やドッキング能力を示すことも、天宮1号と2号の任務に含まれている。

新たな宇宙ステーションは大きなコアモジュールと2機の補助モジュールから成り、2020年代初めにも打ち上げられる予定だ。

先には、重いコアモジュールを軌道に乗せるために必要な性能を持つ最新打ち上げロケット「長征5号」が発表された。

(英語記事 China's space lab set for fiery re-entry

提供元:https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-43593102

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