2024年4月20日(土)

中国メディアは何を報じているか

2018年4月4日

バイナンスの動向に日本以上に注目

 バイナンスへの警告についての観測記事は、日本以上に中国で盛んに引用されることになった。共同創業者の何一が「(警告は)計画でまだ起こっていない」と火消しのためにコメントしているのが伝えられ(http://finance.sina.com.cn/blockchain/coin/2018-03-22/doc-ifysnevk6972054.shtml)、趙長鵬CEOの「(日経新聞は)無責任なジャーナリズムだ」というツイートも伝えられた。

 2017年に設立され、破竹の勢いで取引量を拡大してきたバイナンス。中国での規制強化に伴い、2月に中国大陸のユーザーへの業務を停止すると発表していた。拠点を日本に移しているのではないかという噂は昨年からあった。そういう中での警告の報道に、日本がだめならバイナンスはいったいどこに行くのかと、今後を危ぶむ反応も多かった。23日には実際に警告が出され、その懸念が的中したかに見えた。しかし、翌24日には同社が本拠をマルタ島に移すと発表し、マルタの首相が歓迎の意向を表明――という急展開で、窮地に陥ったかに見えたバイナンスが盛り返した格好だ。

 「バイナンスは日本で再び挫折し、マルタ島へ転戦。チャンスか挑戦か」という自媒体「区塊錬(ブロックチェーン)研究院」の記事は、中国に次いで日本でも挫折したバイナンスのマルタ島移転を新たなチャンスと捉えている(https://www.toutiao.com/a6538543458624209412/?tt_from=copy_link&utm_campaign=client_share&article_category=stock×tamp=1522548467&app=news_article&utm_source=copy_link&iid=29677736999&utm_medium=toutiao_ios)。バイナンスはマルタへの移転に伴い、従業員200人を新たに雇用するとしている。

 ところで、このところバイナンスは組織の分散化を強調してきた。金融庁が警告を出す見込みだと報じられた際も、何一は業務はすでに分散化しているとコメントしていた。十数の国や地域で業務をしているとされ、その中でも特に日本が重要な位置を占めていたようだ。

 「バイナンスはなぜいつもプランBがあるのか」(http://mp.weixin.qq.com/s/B8unL2NsKq7tiWJsy6XzCQ)という自媒体「区塊錬(ブロックチェーン)投資内参(内部参考ニュースレター)」の記事は、窮地に追いやられたはずのバイナンスがマルタへの本社移転を表明して危機を切り抜けた、その世渡りの上手さをほめたものだ。中国当局の規制や3月上旬のハッカー攻撃などの危機を乗り越えられた理由を、「安きに居りて危うきを思う」というマインドと、嗅覚の良さと視野の広さにあるとしている。

関心は仮想通貨からブロックチェーンそのものへ

 今のところブロックチェーンといえば仮想通貨ばかり注目されがちだ。だが、ブームが続くのもそう長くないと言われる仮想通貨に代わって、ブロックチェーンそのものの今後の展開に注目が集まっている。ブロックチェーンによるイノベーションには政府も、JD.com(京東商城)のような民間企業も注目している。

 中国では、ブロックチェーンによる技術革新について、起業家や投資家らが議論を繰り広げる「午前3時スリープレス・ブロックチェーン」という名前のWeChat(微信)のグループチャットが話題になった。仮想通貨に陰りが見える一方で、ブロックチェーン技術自体はまだ夜明け前にあるといえ、期待が高まっている。

 冒頭のスピーチで、楊寧は「もともとネットの世界は(すべての人がフェアな立場になれる)ハッピーワールドのはずだった。ところが大企業がデータやユーザーアセットをカットするようになってしまった」「これまでのフリーというのは偽物のフリーだった。ブロックチェーンは真のフリーを実現しうる」と語った。関心は、仮想通貨で稼ぐというところから、ブロックチェーンでどういう真のイノベーションが起きるのか、それにどう関われるのかというところに移ってきている。
 

  
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