ネット炎上のかけらを拾いに

2018年4月4日

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こんなこと 言いたくないが データ出せ

 すでに武田砂鉄氏が「「睾丸が小さい男は左翼」説で自己肯定にひた走る右派論壇」(http://wezz-y.com/archives/53526/WEZZY3月31日)なる記事を書いているので、論旨の奇天烈さについてはあまり触れないことにする。

 ただあまりにも、子どものけんかじみている。武田氏は修学旅行で陰茎の大きさを比べる中学生のノリと比較して見せたが、まさにそれ。これに反論しようとすれば、「お前の睾丸は小さいのか」もしくは「モテない男が必死www」などと言い返す人が間違いなくいるだろう。子どもか。いや、子どもに失礼だ。

 動物行動研究家が日頃どのような研究をしているのかよく知らないが、「睾丸が小さい男性は『日本型リベラル』になる」と言いたいのであれば、睾丸のサイズとその人の政治的な考え方を調べた統計データが必要なはずだ。大真面目に。

 客観的データを踏まえない感情論や毒舌はバラエティ番組などではよく見かける。他の人が言えないようなどぎつい説教や決めつけをするキャラクターは、いつの時代でも需要がある。留飲を下げたい人がいるからだ。しかしバラエティ番組ではなく、新聞がこれをやるとは。

もし男性識者による女性へのコメントだったら

 昨今、主語が大きい記事や性別やセクシャリティに関する言及はすぐに炎上する。これがもし、男性の専門家による「胸の小さい女性はフェミニストになりやすい」という論旨だった場合、どうだっただろうか。「モテない女は仕事しか生きがいがない。モテない女たちが『保育園落ちた、日本死ね』と言う」という文章だったら、どうだっただろうか。燃え盛るはずだ。

 フェミニストはモテないブスばかりだというようなレッテル貼りは昔から行われてきており、こういった論に乗っかる人も未だに多いだろう。一方で現在であれば、こういった言及はセクハラ(性的な嫌がらせ)にあたるという指摘も行われるだろうし、もっと炎上するだろう。

 私は、特定の政治的信念を持っているのであれば性器がこうだろうと推測するような言及は、とても差別的であり、セクハラであると言いたい。そのカテゴリにいる人に羞恥を抱かせ、反論するのさえときには心苦しくさせることだと思うからだ。同じ土俵に乗りたくないというのが多くの人の思うところだろう。

 竹内氏は文章の前半で「問題なのは彼らが、自分たちの思想に沿わせるために、思想に沿わない事柄に対し妨害行為をとるということだ」と述べているが、テストステロンのレベルが低い云々のように、自分の気に入らない相手に劣等のラベルを貼って「聞く価値がない」かのように見せる曲芸こそ、何の前進も生まない。

 ツイッター上を眺めた限りでは、竹内氏の論がセクハラに当たるという指摘はあまり見なかったように思う。この連載でもたびたび触れてきたことだが、男性の性的な傷つきは女性よりも低く扱われがちだ。男性が性的に傷つくことに対しての社会的な許容度が低い。

 ただの冗談じゃないか。男ならそんなことを気にするな。そんなことを言っているからモテないんだ。

 そんな言葉やムードによって、こういったセクハラがないことにされるのであれば到底看過できない。こんな大真面目なことを書く物書きなど何も面白くないと思われるかもしれないが、ふざけた記事が新聞に堂々と載る時代なのであれば、ネットニュースが大真面目に説教するしかないだろう。

  
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