今月の旅指南

2011年3月3日

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辻 一子 (つじ・いちこ)

岡山県生まれ。フリーライター。旅行会社のPR誌の編集者を経て、1998年からフリーランスに。旅の雑誌を中心に活躍。

 「本職は?」と質問され、「そんなのありませんよ。バカバカしい。もしどうしても本職って言うんなら、『人間』ですね」と答えた岡本太郎。「今日の芸術は、うまくあってはいけない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない」と、我々の一般常識を覆すような芸術論をも展開した。

強烈なメッセージを残した岡本太郎
Ⓒ岡本太郎記念現代芸術振興財団

 「彼は、既成の価値観や常識に鋭く“否”を突きつけ、いつも何かと闘っていました。その人生はまさに『対決』の連続だったと思います。本展では、そんな彼が立ち向かった相手を、“きれい”という概念や“日本の伝統観”など7つの章に分けて作品とともに紹介。彼の本質に迫りたいと思っています」

 と話すのは、東京国立近代美術館主任研究員の大谷省吾さん。岡本太郎というと、1970年の大阪万博のシンボル「太陽の塔」の作者として有名だが、彼は、大阪万博のテーマ“人類の進歩と調和”にも“否”を突きつけている。

「ノン」 1970年
川崎市岡本太郎美術館所蔵
Ⓒ岡本太郎記念現代芸術振興財団

 「技術の進歩が人間を幸せにするとは、彼は考えていなかったんですね。だから、あえて原始的なパワーを見せるため、世界中の民族の仮面や呪術人形などを『太陽の塔』の地下に並べ、その真ん中に『ノン』(否)という彫刻を置いたのです」

 今回の展覧会では、その「ノン」が、会場入り口で出迎える。また、苦闘のなかから生み出された絵画・彫刻・写真・デザインなど約130点の作品のほか、彼の発した言葉や出演したテレビ番組の映像なども公開し、岡本太郎の哲学や生き方を紹介する。 

 太郎亡き後、秘書の岡本敏子さんの尽力によって、今また若者の間で岡本太郎のブームが起きている。しかし、その岡本太郎像は少し常識人すぎると大谷さんは言う。

 「彼にはもっと“毒”があり、嫌われても、憎まれても、自分を通そうとする“ベラボーさ”があった。今回の展覧会では、そんな“毒”を含めた岡本太郎の魅力を紹介したいと思っています。お化け屋敷のような強烈な展示空間の中で、自分の常識が揺さぶられるような経験をしていただけると嬉しいですね」
 

生誕100年 岡本太郎展
〈開催日〉2011年3月8日~5月8日
〈会場〉東京都千代田区・東京国立近代美術館(東京メトロ東西線竹橋駅下車)
〈問〉03(5777)8600
http://taroten100.com/

◆ 「ひととき」2011年3月 号より

 

 

 

  

 
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