世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年4月19日

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 安全保障の問題では、シナイ半島におけるテロ対策、特にISISの「シナイ州」との戦いが重要であるが、あまりうまく行っていない。シナイ半島では昨年11月、ISISの「シナイ州」の仕業と思われるモスク襲撃テロが起こり300名以上の犠牲者が出るなど、シナイ半島でのテロ活動が活発となっている。こうしたテロ活動がエジプトの中心部にまで及ぶようなことがあれば、軍の存立の問題に係わることになり、軍としてはシシを支持できなくなる可能性がある。

 今回の大統領選挙は民主主義的正統性に欠け、シシの今後にも不安が残るものの、エジプトは中東の大国であり、イスラエルとも良好な関係にあり、イスラム過激主義に対する砦としても重要である。エジプトの不安定化や弱体化は、中東の混乱に拍車をかけることになる。それを防ぐには、民主主義の回復と経済改革を勧奨しつつ経済支援を実施していく以外にないであろう。4月1日付けウォール・ストリート紙の社説‘Egypt’s 92% President’は、ムバラク失脚後にムスリム同胞団出身のモルシが反対派の弾圧をしたことを想起すべきであるとしつつ、ムバラクが市民社会を破壊しムスリム同胞団以外の選択肢を無くしてしまったことは誤りであったとして、シシは穏健な政治勢力の声をより広く認めるようにすべきである、と説いている。バランスの取れた論調であるように思われる。

 なお、シシを支持する勢力は、大統領の任期制限を撤廃する憲法改正を求めているが、前出エコノミスト誌の記事は、「永遠の独裁者は平和ではなく停滞と抑圧をもたらす」として、それを却下するよう求めている。任期制限撤廃の試みは、シシの権威主義的な権力集中に対する国内外の反対運動に機会を与えることになるから、シシ自身のためにもならないであろう。

  
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