チャイナ・ウォッチャーの視点

2018年4月12日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

「瀬取り」の取り締まりは強化されるか

 米国は、現在のところ、北朝鮮に核兵器を放棄させるという目標を変えておらず、北朝鮮に対する経済制裁強化の流れも変えていない。経済制裁の中でも、昨年末以来、話題になっているのが「瀬取り」の取り締まりである。

 国連安全保障理事会は2017年9月、核弾頭及びミサイル開発を続ける北朝鮮への制裁として、海上で北朝鮮船舶に積み荷を移すことを禁じる決議を採択した。しかし、決議後も北朝鮮が瀬取りによる密輸を繰り返しており、中国やロシアが関与している可能性が指摘されてきた。これを取り締まろうというのである。

 さらに2018年2月23日、米国財務省は、北朝鮮に対する新たな追加独自制裁を発表した。国連安全保障理事会決議に違反して繰り返される石油や石炭の海上密輸阻止が目的で、これらの行為に関わったと判断した一個人及び海運・貿易会社など27社、船舶28隻が対象とされている。制裁の対象となった者は、この制裁で米国内の資産を凍結され、米国人とのいかなる取引も禁じられる。

 2018年3月9日に、トランプ大統領が金正恩委員長の会談要請を受け入れて以降も、米国の北朝鮮に対する制裁圧力強化の態度自体に変化は見られない。米国は、現段階で北朝鮮が核兵器を放棄することに楽観的である訳ではないのだ。

 もちろん米国も、米朝首脳会談を、議論を通じた北朝鮮の非核化の機会としたいと考えている。首脳会談に向けて米国および北朝鮮の間で非公開の直接協議が行われていることからも、米国が最初から対話に否定的ではないことが理解できる。国内外のメディアによれば、米国と北朝鮮の情報機関は協議を何度も行い、第三国で直接協議も行っているというのだ。

 一方で、同報道は、米朝が「非核化」という言葉の意味で合意しているかは定かではないという。米政府にとって北朝鮮の「非核化」とは核開発計画の完全終結を意味する一方、北朝鮮にとっての「非核化」は段階的に達成されるもので、これまで北朝鮮はミサイル発射実験及び核実験を一時的に凍結するものの、自らの要求が受け入れられないと実験を再開してきた。

 さらに、先述のように、「北朝鮮の非核化」と「朝鮮半島の非核化」という認識の差異も残ったままである。米国が、北朝鮮の非核化に対して楽観的になれないのも当然だろう。それでも米国が米朝首脳会談を放棄しないと考えるのは、米朝首脳会談が、米国が対北朝鮮政策を次の段階に進める理由となり得るからだ。

 次の段階は、瀬取りを行っている貨物船などに対する船舶検査の実施だろう。国連安保理決議は条件付きだが公海上で瀬取りする船舶の検査を要請している。すでに、2018年1月16日、カナダのバンクーバーで開催された、北朝鮮の核及びミサイル問題に関する外相会合で、米国など20か国は、北朝鮮による国連制裁逃れを防ぐため「海上阻止行動」を強化することで合意している。

 制裁を実効性の高いものとするために、海軍等の実力を用いることは、北朝鮮に対する圧力が新たな段階に入ることを意味する。米国は、より軍事的色彩の強い海上封鎖の実施まで考慮している。海上封鎖を行えば、北朝鮮は、「戦闘行為である」として軍事的報復行動を採る可能性もある。

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