チャイナ・ウォッチャーの視点

2018年4月12日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団 上席研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

慎重に行動する中国

 中国は、こうした米国の思考を注意深く観察し、慎重に行動している。2018年4月8日、中国商務省は、大量破壊兵器に関連する物品や技術などの北朝鮮向け禁輸リストを公表したのだ。中国は、3月末に訪中した金正恩委員長を歓迎してみせ、良好な中朝関係を演出しようとしているが、北朝鮮の機嫌を損ねてでも、米国および国際社会に対して配慮しなければならないということである。

 中国自身が貿易摩擦に関して米国の厳しい圧力にさらされているという状況もあるが、北朝鮮の非核化に対する米国の本気度を理解しているからこそ、現段階で、制裁を緩めることができないのだと考えられる。中国が最も嫌うのは、中国周辺地域における安全保障環境の変化である。中国は、米国の意図を慎重に探っている段階なのだ。

 こうした、米国や北朝鮮、さらには中国の動きを見ると、米朝首脳会談が、北朝鮮の非核化を実現する平和的手段であると喜ぶのは早計であるように思われる。米国にとって、米朝首脳会談は米国の平和的解決の努力を示すものであるが、この会談が失敗した時には、米国は、自らの最大限の努力にもかかわらず問題解決の糸口がつかめなかったとして、新たな行動の段階に入るだろう。

 この問題の発端が、北朝鮮が核兵器の開発を始めたことにあるということを忘れ、「対話による平和的解決」に固執すれば、北朝鮮の非核化は遠のくことになる。現在の米国は、北朝鮮の非核化という目標を堅持している。米国がブレない限り、逃げ切りを図ろうとする北朝鮮の企みは成功することはないだろう。

  
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