前向きに読み解く経済の裏側

2018年4月16日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

本当の問題は、学生が「機会費用」を理解していないこと

 学生にとって、説明会に参加するコストがゼロ円であったとしても、「機会費用」がかかっています。機会費用というのは、「それをせずに他のことをしていたら得られていたであろうメリット」のことです。

 説明会に出ないでアルバイトをしていれば3000円稼げたのであれば、説明会の参加費用が3000円だったのと同じことですね。仮に学歴フィルターが無いとしたら、低偏差値大学の学生も説明会に参加できるでしょうが、その場合には学力テストが課されるでしょうから、結局不合格になる可能性が非常に高いでしょう。そうであれば、宝くじのような入社試験に3000円も払うのはもったいないかもしれません。

 「合格する確率が宝くじと同じくらい低い人気企業の説明会がある。説明会に出なければアルバイトで3000円稼げる」とすれば、説明会に出ることは「説明会に出ずにアルバイトをして3000円を稼ぎ、それで宝くじを買う」のと同じことなのです。

 あるいは、人気企業を記念受験することで、「志望度は少し下がるけれども合格するかもしれない会社の説明会に行くことを諦める」とすれば、それは大変もったいないことかもしれません。

 記念受験をする学生の多くが、こうした機会費用を正しく認識せず、「大学受験は受験料が必要だが、就職試験は無料だから、難関企業も受けてみよう」と考えているとすれば、残念なことです。

 そうだとすると、低偏差値大学の学生は、学歴フィルターのおかげで機会費用を免れているのかもしれません。本人はがっかりしたり立腹したりしているとしても、それが本人のためになっているのかもしれませんね。

新卒一括採用が問題だという意見もあるが・・・

 「そもそも日本企業が終身雇用で新卒一括採用だから問題なのだ」という意見も聞かれますが、これは1社の努力で何とかなるものではありませんし、経団連と政府と連合が10年かけて議論してゆくべき問題でしょう。本稿の守備範囲を超えますので、コメントは差し控えます。

 ただ、筆者としては、日本的雇用は嫌いではありませんし、新卒一括採用にはデメリットを上回るメリットがあると考えています。その件は別の機会に。

  
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